注目を集めるシミュレーションベースのデジタルツインについて説明会を開催…アンシスジャパン

9月7日、オンラインで開催されたアンシス社の日本市場へ向けたデジタルツイン普及の取り組み説明会
  • 9月7日、オンラインで開催されたアンシス社の日本市場へ向けたデジタルツイン普及の取り組み説明会
  • デジタルツインは過去の経験を現在に活かし、未来に起こる現象を予測すること。大幅なコスト削減につながるとされる
  • アンシス社が提供するデジタルツインは、シミュレーションをベースとする独自のもの
  • デジタルツインコンソーシアムが立ち上がり、現在200社が参加して新たな標準化を目指している
  • 「ロックウェル・オートメーション」や「VWモータースポーツ」などがそれぞれにアンシス社のデジタルツインを導入し実績を上げている
  • アンシス社のデジタルツインについて説明した大谷修造氏
  • アンシス社はSBグループとVAD契約を締結。日本市場での展開を加速する
  • SB C&S社との締結について説明したアンシス社の柴田克久氏

CAE(computer-aided engineering)のリーディングカンパニーとしてグローバルで展開するAnsys(アンシス)の日本法人アンシス・ジャパンは9月7日、世界的に注目を集めている“デジタルツイン”について、日本での普及を目指す上での同社の取り組みを説明した。

大幅なコスト削減につながると、世界的に導入が進む「デジタルツイン」

この日の説明を担当したのは、アンシス・ジャパンでカントリーマネージャーを務める大谷修造氏。同社が現在進めているのは、デジタルツインの中でもシミュレーションベースとした自社ソリューションでの対応と普及だ。すでにグローバルで展開しているこのソリューションを日本においても製品と販売チャンネルの双方から取り組んでいく。

そもそもデジタルツインは、「リアル空間にある情報をIoTなどによって収集し、そのデータを元に仮想空間でリアル空間を再現する技術」のことを指す。イメージとしては現実世界を鏡のように仮想空間へコピーするようなものであって、それは「デジタルの双子」とも表現される。

たとえば工場での製造設備の設計や都市開発といった現場においても、事前のシミュレーション・分析・最適化を仮想空間で行い、それをリアル空間にフィードバックすれば、リアルな実験を減らすことができる。これは最近よくニュースなどで報道されるコロナ禍での飛沫シミュレーションを思い起こしてもらうと理解しやすい。つまり、リアル空間の実験なしでも、精密なデータを入力することで将来発生されそうな予測がデジタル空間内で再現されるのだ。

それだけにデジタルツインは、「今や航空宇宙や自動車、産業機械、建築&都市開発、オイル&ガスといった幅広い分野で活用されるようになっている」(大谷氏)状況にあり、ここではアップデートのOTA(Over The Air)で行われるのは当たり前。それらの効果で運用コストの削減や開発期間の短縮につながるのは言うまでもない。

“シミュレーション”ベースによりツインモデルの精度向上に貢献

そうした中で、シミュレーションベースで運用するアンシスのデジタルツインは、「ツインモデルの精度を上げることが可能となることに最大のメリットがある」と大谷氏は説明する。さらに「これはエンジニアリングのチェーンを設計の早い段階、企画段階でシミュレーションできることを意味する。この機能を使ってオペレーションの段階までつないでいくのは、デジタルスレッドを構築する事そのものになっていく」と大谷氏は続けた。

こうしたアンシスの実績は高く評価されて様々な企業に導入が進んでいる。たとえば、世界最大の産業用オートメーションと情報ソリューション企業である「ロックウェル・オートメーション」とは戦略的パートナーシップを結び、生産など工場設備のバーチャルコミッショニングで成果を上げているという。また、毎年8月に米コロラド州パイクスピークで開催されるレース「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」では、VWモータースポーツと協業。EVレースカーのバッテリーマネジメントをデジタルツインでシミュレーションして実績を残したという。

また、次世代のデジタルツインとしては、「スマートシティのような大規模な環境下において展開されることを想定。5G通信や自動運転車の通信などをシミュレーション環境で実現し、各所にある街のオペレーションで活用していくことも実現していこうと考えている」(大谷氏)。ただ、大谷氏は「これらの実現にあたっては相当な大規模な展開となり、そこには戦略的パートナーシップとの関係が極めて重要になる」とも語った。

そのために立ち上げられたのが「デジタルツイン・コンソーシアム」で、アンシスはファウンディングメンバーの1社として参加。現在は200社以上がメンバーとして参加しており、参加社と共に新たな標準化団体として活動していくことにしている。

日本国内でのシェア拡大を目指し、SBグループとVAD契約を締結

この日の説明会ではこれと合わせ、9月1日に締結した、「SB C&S」とアンシス製品の販売やマーケティング支援を含むValue-Added Distributor(VAD)契約についての説明も行われた。

SB C&S社はソフトバンクグループとして、IT関連商品の供給事業をはじめとする幅広い販売チャンネルと日本市場の特性を踏まえたWebマーケティングに実績を持つ。今回の締結は、アンシスが自社開発したデジタルツイン技術を日本で展開させることが目的。アンシスが日本国内企業とVAD契約を結ぶのは初めてのことになるという。これをきっかけに新規顧客へのアプローチや、既存顧客の横展開を目指すことで日本国内でのシェア拡大を目指す計画だ。

《会田肇》

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