CASE時代の自動車サプライチェーン(前編)

CASE時代の自動車サプライチェーン(前編)
  • CASE時代の自動車サプライチェーン(前編)
  • CASEによるモビリティの革新
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いすゞ・日野・トヨタ連合の衝撃

2021年3月24日、いすゞ自動車、日野自動車、トヨタ自動車の3社は、商用事業において新たな協業に取り組むことを発表した。同日、3社からリリースされた資料には、「いすゞと日野が培ってきた商用事業基盤に、トヨタのCASE技術を組み合わせることで、CASEの社会実装・普及に向けたスピードを加速し、輸送業が抱える課題の解決やカーボンニュートラル社会の実現に貢献すること」を目指すとある。商用車領域でCASE革命を加速させるための大同団結といっても過言ではないだろう。

CASEによるモビリティの革新

いすゞとトヨタは、本協業の円滑な構築・推進を図るにあたり、相互出資による資本提携を締結することにも合意している。両社は、2006年から2018年までの約12年間、資本提携を結んでいた。2018年に、その関係を一度解消したのにもかかわらず、再度手を携えることに合意したのである。CASE革命を推進するには、呉越同舟で取り組むことが肝要と再認識するに至ったものと推察される。

日本の商用車市場は、日野、いすゞ、三菱ふそう、日産ディーゼル(現UDトラックス)の4社が長く寡占的な地位を占めていた。いすゞは、その4強の一角だったUDトラックスを2020年10月に買収している。つまり、4大トラックメーカーのうちの3社が今般発表の協業に参画したわけだ。

CASEの実現は、トラックメーカーのビジネスに一大変革をもたらすはずである。例えば、自動運転が実用化すれば、「トラックを売ることのリスク」に目を向けざるを得ない。自動運転中に事故が起きれば、整備不良が原因だったとしても、それを立証できない限り、「運転者=メーカー」の責任が問われるからだ。ゆえに、多くのトラックメーカーは、「トラックを売らないこと」を考えるようになる。トラックを売るのではなく、レンタルで提供し、返却時に整備すれば、事故リスクを最小化できる。

つまるところ、CASEの進展は、トラックメーカーを「トラックを売らない会社」に進化させる可能性があるということだ。それほどまでに大きな事業環境の変化が予想されるからこそ、いすゞ、日野、トヨタは、共同戦線を張る道を選んだのである。

(※『トラックメーカーの「トラックを売らない会社」への進化』参照)

CASEによるモビリティの革新

CASEの実現は、トラックメーカーの事業環境に影響を及ぼすだけではない。自動車業界のサプライチェーンにも様々な変革をもたらすはずだ。その本題に入る前に、Connected、Autonomous、Shared&Service、Electricの4つの革新が進むことで、モビリティビジネスがどのように変わろうとしているのかを確認しておこう。

CASE時代の自動車サプライチェーン(前編)
《小野塚 征志》

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