自転車ロード全日本チャンピオン窪木「もっと強く」…新天地で高見を目指す

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自転車ロード全日本チャンピオン、窪木一茂「もっと強くなりたい」…新天地でより高見を目指す
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  • 自転車ロード全日本チャンピオン、窪木一茂「もっと強くなりたい」…新天地でより高見を目指す
  • 第84回全日本自転車競技選手権大会ロードレース男子エリートで窪木一茂が優勝(2015年6月28日)
  • 第84回全日本自転車競技選手権大会ロードレース男子エリートで窪木一茂が優勝(2015年6月28日)
  • ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムを走る窪木一茂(2015年10月24日)
  • ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムを走る窪木一茂(2015年10月24日)
  • ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムを走る窪木一茂(2015年10月24日)
  • 窪木一茂が第46回JBCF全日本トラックチャンピオンシップで三冠を達成

窪木一茂、26歳。自転車選手として、昨シーズンは全日本選手権ロードで念願のタイトルをつかみ取り、国民体育大会でも二度目の優勝を果たした。得意のトラックでも勝利を積み重ね、2016年はさらなる飛躍が期待される。

■念願の全日本チャンピオン

「ここまで自分が活躍できるとは思っていなかった」と窪木は2015年を振り返った。大学卒業後、和歌山県教育庁に所属し公務員として働いていたが、1年目の9月からマトリックス・パワータグで走るプロの自転車選手の顔も持つようになった。それから3年、二足のわらじを履きながら国内の頂点に上り詰めた。
兼業選手として苦労した。仕事があるからといって自転車のトレーニングを欠かすわけにはいかない。練習時間の捻出が一番の課題だった。

「1年目から葛藤でした。(公務員として働きだす前から)ずっと考えて、考えた上で決めたのですが、僕は朝と夜しか練習ができていない。ライトを付けながら、(一般の)皆さんがやっているのと一緒で時間を捻出して、その時間の限りでしっかりと追い込んでいます」

朝と夜だけの限られた練習。時間は毎日3時間ほどで、長くても4時間が限度だった。早朝5時から高校生たちと練習し、夜はライトの光を頼りに走り込む日々を続けた。自転車の練習を終えて帰宅すると、「あとはウエイトトレーニングをして、ご飯を食べたらマッサージをして、お風呂に入って寝る」だけで一日が終わってしまう。仕事と自転車のみだ。

「でも、そう決めて和歌山に行っているので」

固い決意はまず2014年に結果を出し、トラックで全日本選手権オムニアムを制した。そして翌年は全日本選手権ロード優勝という栄冠を招き寄せた。窪木が自転車競技を始めたのは16歳、高校生になってからと決して早くはない。自転車競技に出会うまでは、サッカーやバスケットをしていた。しかし、団体競技では一番にはなれないと感じた。そんな時に自転車競技に出会った。

「(故郷福島の)自分の町が、オリンピック選手が沢山でている町だった。人口少ないんですけど。そういう所から自転車が強いからやってみないかと(誘われた)。それで始めたのがきっかけですね」

窪木はロードレースとトラックの二種目をこなすが、トラックに重きを置いている。トラックに積極的に取り組めるよう公務員の道を選んだ。1周400m前後のバンクを走るトラック、その魅力は駆け引きだ。

「空気抵抗とか、ロードレースよりも限られたスペースで、規定の細かい機材で勝負することでより鮮明になる。同じところを走るので何回も何回も選手の苦しい表情、うれしい表情、速かったスピード、遅いスピード、駆け引きが間近でわかる。ロードレースと違ってしっかり見ることができるから楽しいなって思います。それに女性のレースも見れるし。ロードレースも女性のレースはありますが、トラックレースの方が女子と男子同じ比率で走っている。そこが楽しいですね」

【次ページ 2016年から新チームで走る】

■本場ヨーロッパの選手から学びたい

2016年からはイタリア籍のプロコンチネンタルチーム、NIPPO・ヴィーニファンティーニで活動する。ジロ・デ・イタリア総合優勝経験のあるダミアーノ・クネゴを中心としたイタリア人11名、日本人4名、スロベニア人・ルーマニア人各1名で構成されたチームだ。

チームを率いる大門宏監督には高校卒業時と大学卒業時の2回、プロ入りの話をもらっていた。全日本タイトル獲得後の昨年8月、3回目のオファーがあった。

より高見を目指し、移籍を考えた時に「日本人がいないチームに行きたかった。頼りたくなかった」という気持ちもあった。だが大門監督の熱意に加え、「ヨーロッパで走った経験がないから勉強になる」と新天地をNIPPO・ヴィーニファンティーニに決めた。チームからは「まずトラックに集中して欲しい」と言われた。チームタイムトライアルでの牽引役も期待されている。
チームメートには3人の日本人(山本元喜、石橋学、小石祐馬)がいるが大半はイタリア人だ。しかしマトリックス・パワータグ時代に、イタリア語の話せるポーランド人のマリウス・ヴィズィアックが仲間だったこともあり、窪木はコミュニケーションに「まったく不安はない」という。本場ヨーロッパで活躍する選手からは多くのことを吸収しようとしている。

「走りのテクニックや乗り方、どういう部分に筋肉が付いているか。マナーや習慣性も勉強したいし、ありとあらゆることを学びたいですね。特に同じ身長、体格の選手ならなおさらこういう乗り方をしているだとか。そういう部分をまだまだ見つめられると思っているので、そこから自分の能力アップをあげていきたいです」

16歳から始めた自転車競技。その頃の窪木が、現在の自分を知ったら「ビックリするでしょうね」と笑う。

「高校の同級生にもビックリされるだろうし、まさか僕が社会人としても、大学を卒業しても自転車を続けている、ここまで続けているのが自分でもビックリ。周りに僕より強い人がいっぱいいたのに、その中で僕が生き残ってきた。みんなのぶんも頑張らなくちゃいけないなと思い始めています」
トラックとロードレースで確実に結果を残してきた。自身が結果を残すことで、後輩たちに見せたいことがある。

「26歳で遅咲きになると思うのですが、自分がトラックレースで歩んできた結果と、ロードレースの結果を持っていることを自信にして、高校生や大学生が目指したいと思えるような選手になりたいです。日本では高校、大学でトラックが盛んですが、そこで終わってしまう。それを活かしてロードに転向できるんだと、新たな選手としての可能性を見せていきたい」

NIPPOがスポンサードをする日本ナショナルチームのメンバーとして、昨年末からオーストラリアに遠征。2016年元旦からクリテリウムのステージレースMitchelton Bay Cycling Classicに参加した。初日6位、2日目8位、3日目6位、4日目17位。総合成績は6位でフィニッシュし、新年の出足は好調だ。

全日本選手権ロードを制したことで、やっとプロ選手として走っていく自信ができた。今年はまずトラックでリオ五輪出場を目標としている。3月にはトラック世界選手権が控えている。

自分自身を「まだ完成していない」と言う。

「これから色んな強い人と走って、吸収して、それで強くなりたい」

新しい舞台、新しい仲間とともに、窪木一茂はまたひとつ上のステージを目指していく。

自転車ロード全日本チャンピオン、窪木一茂「もっと強くなりたい」…新天地でより高見を目指す

《五味渕秀行@CycleStyle》

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