【ブリヂストンのタイヤ開発現場】REGNOの静粛性と転がり抵抗試験の裏側を見る

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ブリヂストン 東京工場の技術センターにある「無響室」
  • ブリヂストン 東京工場の技術センターにある「無響室」
  • ブリヂストン 東京工場の技術センター
  • 小型フォース式転がり抵抗試験機
  • 小型フォース式転がり抵抗試験機でのテスト
  • 乗用車用の惰行転がり抵抗試験機
  • 乗用車用の惰行転がり抵抗試験機
  • 小型フォース式転がり抵抗試験機
  • ブリヂストン 東京工場の技術センターにある「無響室」

ブリヂストンは今年1月、同社のプレミアムブランドである『REGNO』の新製品となる乗用車用タイヤ「GR-XI」とミニバン専用タイヤ「GRVII」を発表。「GR-XI」を2月から、「GRVII」を4月から発売している。

今回、そのREGNOをはじめブリヂストンのタイヤ開発を行っている拠点のひとつ、東京都小平市にある技術センターの一部が報道陣に公開された。

◆日本には1台のみ、転がり抵抗試験の基準となる機械がここに

最初に訪れたのは、「転がり試験機」と呼ばれる装置が設置されている部屋。転がり試験機とは、その名のとおりタイヤの転がり抵抗を計測するための機械だ。タイヤはしっかりと路面をグリップする性能が求められるが、それと同時に転がり抵抗の低さも求められる。転がり抵抗は燃費に大きく影響する性能なだけに、年々その注目度が高くなってきている。

小平の技術センターには5台の転がり試験機が備えられていて、日々多くのデータが収集されている。種類は大きく分けてふたつ。ひとつは乗用車用の惰行転がり抵抗試験機。この機械はタイヤを約200km/hでの走行状態にまで加速、その後惰性で回転するタイヤが停止するまでの状態を計測し、タイヤの転がり抵抗を算出する。20km/h~200km/hまでの各速度域の転がり抵抗が計測できるという。この機械は1977年に導入され現在も現役で使用されているが、導入当時と現在ではタイヤの転がり抵抗がかなり異なり、惰性でタイヤがなかなか停止せず現在は試験にかかる時間が非常に長くなっているという。

もうひとつの試験機が「フォース式」と言われるタイプの試験機。この試験機はタイヤ軸にロードセルという力を検出するセンサーが取り付けられており、タイヤがかける力、タイヤにかかる力の両方をタイヤ軸から検出できるようになっている。タイヤの転がり抵抗については空気圧が非常に大きく影響してくるということで、試験機が置いてある部屋は二重構造となっていて、そのどちらもが摂氏25度に保たれていた。

現在、国内のタイヤにはラベリング制度というものが広く採用されていて、転がり抵抗とウェットグリップ性能が表示されていることが多い。ラベリング制度は、欧州のグレーディング制度に基くものだが、そのグレードを決める標準機は欧州にも10台ほどしかない。しかし、メーカーによってはその標準機と自社の試験機の値の相関をとって、当局に申請し、使用許可を得たものを持つところもある。それがここ小平の技術センターに設置されている試験機で、日本では1台しか存在しない。

ブリヂストン以外のタイヤメーカーはこの試験機で検査された「転がり抵抗測定基準タイヤ」を購入し、比較試験を行うことでラベリング制度と整合性のある試験を行うことができるという。基準タイヤは195/60R16の『ECOPIA』と、225/80R15の『DUELER』の2種類。この2種類を1セットで購入し、自社の試験機を調整することになる。

◆正確に音を計測するため、凝らされた工夫

続いて案内されたのが「無響室」という部屋だ。その内部は、壁や天井、床などが吸音材で覆われており、音が反射することを防止して試験物が発する音を正確に計測することを目的としている。今回案内された無響室は、クルマを中に入れることもできる設計のため、床は吸音処理が行われていない。ブリヂストン技術センターの吸音材はとがった三角柱の形状で、内部はグラスウール、表面は布で覆っている。ここで見られたのが、REGNOに採用された「ダブルブランチ型共鳴器」の有無によるノイズの差。実際にタイヤを回転させて音を計測するのかと思いきや、実は違った。タイヤが取り付けられた計測装置の前側から走行風に模した風を当て、非常に細い針のようなマイクをトレッド内に差し込んでその音を計測する。実際に共鳴器の有無での音を聞いたが、共鳴器のない音は非常に耳障りで雑音成分が多いもの。会話の妨げにもなるタイプの音だった。

この無響室の隣には「残響室」という、無響室とはまったく逆の性格の部屋が設置されている。残響室は壁や天井、床がコンクリートの打ちっ放しで、さらにアクリル板によって複雑な面が構成されていて、その名のとおり音が響く構造になっている。ブリヂストン技術センターの残響室が特徴的なのは、無響室とドアでつながれたコネクティングルームのような構造になっていること。残響室側で音を出し、無響室側で計測するといったことが可能になっている。この残響室ではタイヤの内側に繊維質のものを貼り付けてタイヤの静粛性を向上するという実験が行われていた。

ブリヂストン技術センターの無響室と残響室の大きな特徴は、その両方をブリヂストン自身が製造する免震ゴムを使い、免震構造となっていること。さらに残響室についてはエアスプリングを使って二重の防振構造とすることで、道路の振動などが試験設備に伝わらないようにし、正確な計測を可能にしている。

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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