“プロゲーマー育成コース”を新設する、東京アニメ・声優専門学校を直撃

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プロゲーマー育成コースを新設する「東京アニメ・声優専門学校」の教育方針とは…実際に行ってみた
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「君のプレイで世界を熱狂させろ!」―そんなスローガンで、2月17日に突如「東京アニメ・声優専門学校」(以下、東京アニメ)がe-sportsの専門課程「e-sports プロフェッショナルゲーマーワールド」の創設を発表しました。このニュースに接して、学校がプロゲーマーを養成する時代になったのかとゲーム関係者はもちろん一般の人たちも驚いたのではないでしょうか。

Game*Sparkでは既に担当者のコメントを紹介していますが、より詳しく話しを聞くため、東京都・西葛西にある「東京アニメ」に実際に行ってみることにしました。

◆「プロゲーマー養成」ではなく「業界で活躍できる人材の育成」にフォーカス

実際の「東京アニメ」は、ウェブサイトの華々しく活動的なイメージとは違って、その総合校舎は優雅で落ち着いた雰囲気。正門の壁画、額縁に収められた映画のワンシーン、玄関で来客や生徒を出迎える「学生最優秀作品」と書かれたアニメキャラクターの等身大オブジェなどから、「アニメ関係の人材輩出に特化した専門学校」であるとわかります。

冒頭で述べたように「e-sports プロフェッショナルゲーマーワールド」という名前は「プロゲーマーを養成する機関」のように思えます。しかし4つの専攻うち本格的にプロゲーマーを目指すのは「e-sports 総合プロゲーマー専攻」の1つだけ。

■総合プロゲーマー専攻
プロゲーマー、プロゲームチームのマネージャーを目指すための専攻。FPS、RTS、格闘など、さまざまなe-sportsタイトルゲームに挑戦し、プロマインドやゲームの戦略や戦術を習得していきます。将来は世界で通用するプロゲーマー、プロチームのマネージャーを目指します。

■ビジネス&宣伝プロモーション専攻
e-sports業界、ゲーム業界で就職や起業を目指すための専攻。e-sportsのビジネスに関する基本知識やマーケティング・スポーツビジネスのノウハウを習得します。将来はゲームメーカー、イベント会社、マーケティング企業への就職やe-sportsでの起業を目指します。

■ゲーム実況・MC&声優専攻
e-sports大会の舞台で活躍するゲーム実況・MCを目指すための専攻。あらゆる舞台で活躍するプロの実況者や司会者を講師陣に迎え、世の中のe-sportsの熱狂を「言葉」で伝えるための知識や技術を習得します。将来はさまざまなe-sportsの大会やイベントで活躍できるゲーム実況・MCを目指します。

■イベント&テクニカルスタッフ専攻
e-sportsの大会やイベントを作り上げるスペシャリストを目指すための専攻。e-sportsの大会やイベントを「企画する」「作る」「運営する」「伝える」ための基本知識や技術を習得します。将来はe-sports大会やイベントのプロデューサー、ディレクター、テクニカルスタッフを目指します。
今回お話を伺った「東京アニメ」入学事務局によると、残り3つの専攻は「e-sports ビジネス&宣伝プロモーション専攻」「e-sports ゲーム実況・MC&声優専攻」「e-sports イベント&テクニカルスタッフ専攻」であって、全体としては「ゲーム業界で働くこと」や「e-sportsイベントを盛り上げること」に焦点を合わせているようです。

こうした方針は、「東京アニメ」入学事務局から以下の説明を聞くとそれほど間違いではないとわかりました。「近年ではイベントの司会やニコニコ生放送等、ゲーム関係で声を使う仕事も増えました。しかし、たとえばゲームの司会・実況者として活躍されている方でも、専門的に声の勉強をされた方は実は少ないのではないでしょうか。つまり、ゲームに熟達していると同時に、社会で必要な技術を持った人材が求められていますので、そんな企業様のニーズにお応えする形で開設を決断しました。我々は様々なデバイス・ゲームメーカーと提携し、メーカーと一丸となって業界を盛り上げていく方針です。卒業生の就職先としては、ゲーム開発会社やイベント事業を行う会社を想定しています」

◆社会で役立つ技術を学ぶ

全課程に共通するのは、「東京アニメ」の建学理念の1つ「人間教育」です。生徒にはゲーム関連の専門技術のほかに「ビジネスマナー」「プレゼンテーション」「セルフマネジメント」など社会で基礎となる技術の習得も課せられます。また目下、e-sportsは国内よりも海外で盛んです。日本人でもゲーム関連の技術が高ければ海外進出の機会も増えるでしょう。そんなとき、臆さずに現地の人たちとコミュニケーションが取れるよう英語の授業も取り入れるそうです。

◆得意ジャンルに特化して授業を受けられる

ゲーマーとしてやはり気になるのは、プロ選手またはマネージャーとして必要な技術を学ぶ「e-sports 総合プロゲーマー専攻」の授業形式です。具体的な授業内容はゲーム業界の皆様とご相談中とのことですが、「東京アニメ」入学事務局は「FPS、RTS、格闘などジャンル別に講師の方を招いて、生徒のプレイを見て指導する“コーチング”のような形式になるのではないかと思います。また、生徒は自分の得意なジャンルに特化して授業を受けられますので、“RTSのプレイヤーなのに格闘ゲームをプレイしなければならない”ということはありません」と付言しました。

授業には高性能のゲーミングPCがズラリと並んだゲームルームを使用する予定ですが、授業外の時間であれば生徒もそのゲームルームを自由に使うことができます。個人練習に使えるほか、「部活的に学校内で大会やゲーミングチームが結成されるかもしれません」とのこと。

◆現役プロが指導

講師の選定については、「本校では“アニメ制作・声優等全ての分野で現役のプロが指導を行う”という方針を定めておりますので、“e-sports 総合プロゲーマー専攻”でも現役のプロゲーマーの方に指導の時間を取っていただく予定です。学校側の人間が指導することはありません」と入学事務局。

日本では「プロゲーマーとして生計を立てている選手」が格闘ゲームを除いて数が少ないのが現状ですが、裏を返すと「環境が整っていない日本でプロとして生計を立てている選手には相当な実力を持っている」ことにほかなりません。そんなプロに指導してもらえるのはプレイヤーにとって夢のような話ではないでしょうか。もしかするとプロ格闘ゲーマーにとってカリスマ的存在の梅原大吾選手による授業もあるかも。

なお梅原大吾選手といえば、4月19日に「東京アニメ」入学事務局で、入学希望者向け特別講義を開催。ゲストとして、「闘劇-SUPER BATTLE OPERA」などの司会でお馴染みの郡正夫さんも登壇します。また校舎案内、個別相談会が予定されています。

◆地方のプレイヤーが東京に進出する転機となるのでは?

入学の応募資格は「東京アニメ」の全課程と同様に「高卒またはそれと同等以上の学力を有する18歳以上の者」のみで年齢制限はありません。そこに「あらゆる層に門戸を開く」という「東京アニメ」の理念が反映されています。

「東京アニメ」には23棟の学生寮(自炊式・食事付両方)も用意されています。オンライン大会で大活躍しているのに地方に住んでいるためオフライン大会が多い都内になかなか来られないプレイヤーもいますが、そういう人たちには「東京アニメ」は東京でゲームと学業を両立できる絶好の場となるでしょう。しかも国籍も問わないので、日本語勉強中の留学生にもe-sports業界への道が開けるかもしれません。

入試は面接とライティングのみですが、これは「東京アニメ」入学事務局によれば「実技(ゲームの腕前)を重視する講師もいらっしゃるかもしれませんが、人間的に信頼でき、またその道に進む覚悟ができているかを確かめる上で、面接とライティングは欠かせないと思っています」という理由からです。

◆3年後の国内e-sports業界の救世主となるか

発表当初は「e-sportsの専門学校」というインパクトがあまりにも強かったためにネット上でも不安の声が上がり、筆者自身にも戸惑いがありました。

しかし実際に校舎を訪ねてみると「まったくノウハウの無い組織が開校するのではなく、教育実績豊富な東京アニメが新専攻を設置する」「“ゲームの技術向上”より“e-sports・ゲーム業界で活躍できる人材の育成”に重点を置いている」ということがわかり、得心した次第です。

具体的な授業内容等についてはやはり例の無い試みのため確定していない部分が多いようですが、「業界の人材不足を解消するために教育に力を入れる」というアプローチにはとても新鮮な印象を受けました。

2年制の今課程の開校は2016年4月。生徒たちが社会に飛び出すのは2018年です。未来の国内e-sports業界を支えているのは「e-sports プロフェッショナルゲーマーワールド」卒業生たちかもしれません。

プロゲーマー育成コースを新設する「東京アニメ・声優専門学校」の教育方針とは…実際に行ってみた

《nemuke》

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