【ベントレー ミュルザンヌ 試乗】贅を極めた驚愕のドライバーズカー…西川淳

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ベントレー ミュルザンヌ
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ベントレーは、ドライバーズカーである。ロールスロイスと“兄弟”であった年月があまりに長かったので、“同じような英国の高級車”だと思われている方も多いと思うが、DNA的にはレーシングの血も濃く、MG~ロータス~ジャガー~アストンマーティン~ベントレー、という具合に、有名な一連のブリティッシュ・スポーツの文脈で語っても、本来、なんらおかしくはないブランドなのだ。

とはいえ、ラグジュアリィブランドの筆頭であるという事実は揺るがない。贅を極めたクルマでありながら、DNAのなせるワザ=ドライビングファンを忘れないという点が、むしろ独特のポジションを得る所以となっている。

『ミュルザンヌ』は、そんなベントレーのフラッグシップモデルだ。2010年にデビュー。“もう5年も経っているの?”と思わせるあたり、さすがは普段まるで見慣れぬクルマではある。

でかい。目の当たりにすると、そうとう大きい。脇に立てば、存在感に圧倒される。愛嬌のあるカオが、逆に怖い。ホンマモンである証拠だ。

もっとも、これが真に贅沢なクルマであるという実感が湧いてくるのは、乗り込んでからだった。ベントレーは、このミュルザンヌのインテリア組み立てに、車体生産総時間の実に半分以上(170時間以上)をかけている。それだけに、その空間はというと、自動車における贅の極みである。香りからして、もう違う。

恐る恐るアクセルペダルを踏み込んでみれば、一瞬にしてドライバーズカーであることが分かる。とても引き締まった体躯の持ち主である。だから、ドライバーの操作に対する車体の反応がすばらしい。五分もドライブすれば、威圧感あるボディサイズのことなど、あっさりと忘れてしまえるほど。昔の、ロールス時代のベントレーでは、その境地に達するまで、小一時間はかかったものだった。

今や、ミュルザンヌでも、『コンチネンタル』シリーズに負けず、まるでアッパーミドルクラスのスポーツサルーンを駆っているかのような感覚で走っていけるのだ。特に、加速とハンドリング、制動の各フィールは、まったくもって大型サルーンのそれだとは思えない。否、大きなクルマに乗っているという意識があるからこそ、それを感じさせない走りの質感に、驚愕するのかもしれない。

多少、自分の身体の調子が悪いときでも、ミュルザンヌでなら、東京から自宅のある京都まで、難なく帰りつくことができるだろう。何なら、その先の、四国や中国、九州までドライブしてもいい。地元の旨いもんを、期待して。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:(評価なし)

西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。

《西川淳》

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