小学館集英社プロダクション、社の両輪としての教育事業にさらに注力

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代表取締役社長 紀伊高明氏
  • 代表取締役社長 紀伊高明氏
  • 教育事業の主な内訳
  • 楽習システム
  • イーコラボが実践するストーリーベースカリキュラムの開発者
  • 文脈で学んだ英語は実践的
  • 保育園でも教育的内容がほしいという声は多い
  • 保育園事業も展開している
  • ベビーシッター事業もアウトソースしたい企業向けに展開

 通信講座「ドラゼミ」などを展開する小学館集英社プロダクション(ShoPro)は9月17日、2014年度秋の教育事業説明会を日比谷図書文化館で開催した。「あそびから学びへ」をキーワードに「楽習」事業を展開する同社は、幼児からシニアまで幅広くサービス提供を続けていくという。

 ShoPro代表取締役社長の紀伊高明氏によると、同社はもともと、小学館と集英社がもつマンガやアニメのキャラクターの版権管理を行う会社として1967年にスタート。2年後にキャラクターを利用した英語教育カセットテープの販売を始めたことが教育事業参入のきっかけとなり、現在は版権管理をともなうメディア事業と教育事業でビジネスを展開している。2014年3月期の売上げでは、メディア事業局が142億円、エデュケーション事業局が136億円と2つの事業が文字通りの2本柱となっているという。

 エデュケーション事業局の売上げ構成は、教室系事業(33%)、保育サービス(37%)、通信教育(11%)、公共施設の管理運営(15%)、矯正教育(4%)、その他となっている。ドラゼミは通信教育に含まれているが、キッズ英語などの教室事業と保育サービスが事業局全体の70%を占めているのが特徴だ。

 同社は、教育事業に対する理念「あそびから学びへ」をもとに教室、保育事業、通信講座などを展開。教育とエンターテイメントにおける長年のノウハウを活用した独自のカリキュラムや取組みを他社との差別化要因とし、学習指導要領準拠に必ずしもこだわらないドラゼミなどを提供してきた。重要視するのは、子どもの遊びや興味と社会生活を結びつける学習環境「楽習」を提供し、必要なスキルを習得することだという。

キッズ教育事業では英語に注力

 教育事業説明会における発表内容から各事業部の概要とトピックスをピックアップすると、まず教室系事業のメインとなるのがキッズ教育事業部だ。この事業部には「ドラキッズ」「小学館アカデミー」「イーコラボ」などが含まれる。国際化、小学校での英語教科化、東京オリンピック開催に関連する語学学習などといった社会的・市場的ニーズを受け、早期英語教育に力を入れているという。

 2013年にはストーリーベースの英語学習という新しい基軸を取り入れた「イーコラボ」をスタートさせ、順調に生徒数を増やしている。イーコラボでは、青山学院大学文学部のアレン玉井光江教授監修によるオリジナルの英語授業を展開。「ももたろう」「うさぎとかめ」「3匹の子ぶた」といった誰もが知っている童話や物語を英語で読み聞かせ、ダンスやリズム、手話の動きを取り入れることで、使える英語を自然に身につけようというカリキュラムが特徴だ。

 イーコラボに半年通うと、子どもたちは物語を英語で語れるようになると担当者は話す。すでに知っている物語を英語で学ぶことで、シチュエーションに合ったフレーズを話すための引き出しを増やすことができるようだ。イーコラボは2013年に首都圏で5教室展開し、2014年は大阪圏にも教室を増やした。2015年には全国展開を準備しており、物語を活用した英語学習を広めていくという。

楽習保育とベビーシッターサービス

 総合保育事業部は、保育園事業とベビーシッターサービスに関する説明を行った。「楽習保育」とは、保育園でも教育的プログラムが欲しいという保護者のニーズに応え、同社が独自開発した教育的プログラムを保育士が実践する。プログラムは学習的な内容だけではなく、運動や自然に親しむものも含まれ、保育士が専用教材を使うことで学びの要素を提供できるようデザインされている。

 ベビーシッターサービスでは、訪問型の通常シッターから塾や学童への送迎サービス、病後児サービス、産後サービス、教育サービスなどきめ細かいケアプログラムが用意されている。これらのサービスには傷害保険なども含まれており、安全性への配慮が行き届いているところが特徴だ。

クロスプロモーションも展開するドラゼミ

 通信教育事業部は、幼児・小学生向けの通信添削学習「ドラゼミ」を展開している事業部だ。「ドラえもん」を生かした教材は子どもたちを飽きさせず根強い人気を誇るという。キャラクターを利用した教材は学習の習慣づけに役立っており、会員は全国で43,000人に上る。

 指導の特徴は、作文、図形問題、そして個別担任制の添削指導だという。学習指導要綱にとらわれないため、マンガや「だじゃれをつくる問題」など「遊び」の要素を取り入れている。

 「ドラゼミ」は企業アライアンス戦略も実践している。デジタルアーツとはコンテンツフィルタリングのセミナーや講習で協業しており、ローランド・ミュージック・スクールとは、相互の会員どうしで教材や情報を交換するクロスプロモーションを展開している。

社会教育事業や公共施設運営も

 ShoProでは、子ども以外を対象としたビジネスも展開している。新事業企画部、社会教育事業部、矯正教育事業部などがそれを担当する。新事業企画部では、65歳前後のシニア層を対象とした絵画教室や「江戸文化歴史検定」事業を手掛けている。絵画教室は、シニア層を対象とすることで、昼間空いている学童施設やフィットネスクラブなどを有効活用している。今後は、教室の通信講座やフランチャイズ展開も考えているという。

 社会教育事業部は、指定管理者制度を活用し、自治体の図書館、美術館、文化センターなどの運営を受託する事業を展開。すでに全国で46施設の運営実績もあり、ShoProのコンテンツを生かした児童施設(学童やキャンプ場など)の運営も行っている。

 また、PFIによる刑務所運営事業も行っており、担当する矯正教育事業部は、刑務所運営のほか、犯罪者の社会復帰支援のための職業訓練なども行っている。将来的には、これらの運営ノウハウやプログラムなどを活用して、薬物乱用防止啓発訪問事業、出所者の就労支援事業まで広げたいという。

 これらの3つの事業は、一般的な学習とは直接的な関係は少ないが、指導カリキュラム、コンテンツ、支援プログラムなどShoProとしての強みを生かせる部分でもある。事業範囲は多岐にわたるが、子どもとの接点を増やすことでShoProのコンテンツ力を最大限に活用していく戦略だ。

ShoPro、キッズ教育事業では早期英語教育に注力

《中尾真二》

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