次世代バイオディーゼル燃料の実用化を目指す「デューゼルプロジェクト」を、ユーグレナと共に発表したいすゞ自動車は、なぜミドリムシ由来の新しいバイオ燃料開発に取り組むのか。
まず、バイオ燃料というとトウモロコシやサトウキビを原料としたものが有名だが、これらを育てるには広大な耕作地が必要で、育成に時間もかかる。一方、ミドリムシは「ムシ」と名が付くが虫ではなく微細藻類という光合成を行う生物だ。そのミドリムシが大量に培養可能でありバイオ燃料に使えるとあれば、次世代燃料の可能性が広がる。
ユーグレナは世界で初めてミドリムシの大量培養に成功し、ミドリムシ由来のバイオ燃料の研究を行っている企業だ。いすゞがユーグレナと提携し、「デューゼル」開発に強力する理由について同社の細井行社長は、「資源の少ない日本では、燃料の多様化に対応することは非常に意味がある。既存のディーゼルエンジンを生かせるバイオ燃料に関心を持っている」と語っている。
ユーグレナが目指すデューゼルは、従来型のバイオ燃料と違い、100%ミドリムシを原料とするとしている。従来型のバイオ燃料は燃焼によってスラッジが溜まるなどの問題があり、通常の軽油に混ぜて使用する(そのままでは内燃機関燃料として使えない)。デューゼルは分子構造が軽油と似ているため、原理的には生成したものをそのまま燃料に使える。ミドリムシは培養段階でCO2を吸収して育つので、ミドリムシしか燃やさなければカーボンオフセットも理論上はゼロにできる。
いすゞ自動車は、このプロジェクトにおいて主に、ユーグレナが開発する新しい燃料の試験、性能評価などを行うとしているが、取材での発言では、資金的な援助も否定していなかった。CSR活動のみでのパートナーシップでないことをうかがわせる。ユーグレナは、100%ミドリムシ由来のデューゼルの生成技術を2018年までに確立し、2020年には実用化を目指すとしている。
言葉通りであれば、比較的近い将来、原油価格や天候、穀物相場などに左右されない、価格や供給体制(ミドリムシはタンクで培養できる)の安定したディーゼル燃料が実用化されることになる。トラックや大型車がメインのいすゞ自動車としては、可能性のある次世代燃料にコミットしておくことのメリットを考えているだろう。
ユーグレナによれば、デューゼルは、原理的には既存のディーゼルエンジンに一切の変更を加えることなしに利用できるとしているが、エンジン制御やフィルター、メンテナンスなどまったく従来と同じでよいとは限らない。開発段階から自社エンジンでテストができるというのは、実用化された市場で先行できる。
バイオ燃料が普及するには生産体制や流通経路などの問題もあるため、現時点での予想は難しいが、細井社長の言うように、日本にとっては自国で燃料が生産できる意味は大きい。