【ATTT14】夏野剛氏「自動車業界もネットが溶けてきた」…ATTTアワード受賞喜びの声と選評

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夏野剛氏
  • 夏野剛氏
  • ボルボ・カー・ジャパン広報室 赤堀淳氏
  • ボルボ・カー・ジャパン広報室 赤堀淳氏
  • 岩貞るみ子氏(モータージャーナリスト)
  • トヨタ自動車 流通情報改善室 北明健一氏
  • 西田宗千佳氏(ジャーナリスト)
  • 林信行氏(ジャーナリスト)
  • スマートバリュー ビジネスソリューション ディビジョン 上野真氏

3月12日、第5回 国際自動車通信技術展(ATTT)に合わせてATTTアワード発表会・授賞式が会場内ステージで執り行われた。受賞した各企業の代表者が喜びを語った。選考委員による選評と、選考委員長の夏野剛氏による総評も合わせてお届けする。

●先進安全・環境技術部門:ボルボ V40 歩行者用エアバッグ

ボルボカージャパン 広報室 赤堀淳氏
「(2009年の)『XC60』発売時に「シティセーフティ」と呼ばれる自動ブレーキを国産メーカーに先駆けて搭載し、第1回のATTTアワードをいただいたのは記憶に新しいところ。以後、クルマに乗っている人を保護する技術は開発されてきたが、歩行者を保護する技術は大きな進化がなかった。歩行者用エアバッグは、不運にも人を轢いてしまった際に、Aピラーのワイパー付け根部分に設置されたエアバッグが開いて歩行者へのダメージを和らげるもの。数年後あるいは10数年後にこの技術が色んなクルマに搭載されて、ひとりでも多くの人命を救うことができれば嬉しい」

選評 岩貞るみ子氏(モータージャーナリスト)
「電波やカメラを使った予防安全は開発が進んでいるが、クルマの外にいる人の被害をいかに軽減するかが、とくに今の日本においては重要だと思う。私が特に評価をしたのは、このような先進的な安全技術を一番高いクルマに投入するのではなく、ボルボのラインナップのなかでも一番手が届きやすいクルマ(V40)に搭載したこと。本気で歩行者を守りたいという意気込みを感じた」

●ビジネスソリューション部門:トヨタ自動車 次世代e-CRB

トヨタ自動車 流通情報改善室 北明健一氏
「e-CRBは直接お客様に提供するサービスではないが、“お客様の笑顔のために”という部分でどういうサービスをディーラーに仕組んで提供するかという志で販売店とともに開発を進めてきた。今後もいっそうお客様の笑顔が輝くようなサービスを提供したい」

選評 西田宗千佳氏(ジャーナリスト)
「自動車販売店において、購入からアフターまで顧客との接点をいかに改善していくかは重要だ。中国の広汽トヨタで展開しているe-CRBは、お客様を待たせないために、無駄な作業を低減することを目的として時間や場所の使い方をゼロから考え直したもので、メーカーと販売店が一体になって価値を提供しているのがポイント。お客様とのタッチポイントの改善という点でも、今後も期待して見ていきたい」

●UI/UIデザイン部門
該当なし

選評 林信行氏(ジャーナリスト)
「モビリティのUIは大きく変わりつつある。この部門への応募はいくつかあったが、数年後にATTTアワードを振り返って思い出せる(インパクトの)強さがあるかといわれると、それに値するものなかったというのが正直なところ。該当なしという結果になったのは過渡期という状況もあるのかもしれない。残念な結果と捉えずに、エンジニアリングとデザインを一緒に考えていく機会になれば。UIは日本企業の強みと思うので、来年に向けて取り組んでほしい」

●ナビゲーション&クラウドサービス部門:スマートバリュー CiEMS Navi

スマートバリュー ビジネスソリューション ディビジョン 上野真氏
「CiEMS NAVIは、主に法人の白ナンバー業務用車両向けにOBDコネクタでスマートフォンと連携して、エコ運転・安全運転を支援するナビゲーションシステム。当社ではInnovation for Justiceというスローガンを掲げているが、このサービスに関しては、カーナビのソフト化だけではなく、悲しい事件がなくなってもらえればと思って開発した」

選評 園部修氏(ITガジェット統括部長)
「CiEMS NAVIは、非常に低価格であること、そして機能的には充足されたものであるということが大きかった。テレマと聞くと大仰で大規模なシステム、そして導入費用が高いというイメージがあるが本サービスは導入のハードルがすごく低い。この部分を評価した」

●コンテンツアプリ部門:クロスフェーダー/ゼンリンデータコム 漫画ドライブ

クロスフェーダー 代表取締役 田中剛氏
「このアプリはクルマの安全運転と走行距離を競うもの。試行錯誤ばかりで開発はなかなか進まなかったのだが、こうして世に出すことができ、そして受賞することができて嬉しい」

ゼンリンデータコム 企画本部 新規サービス推進室 篠原啓氏
「漫画ドライブは同業者もドライバーも楽しめるようなアプリを目指した。これからももっと楽しめるようなアプリを開発したい」

石井寛子氏(アプリソムリエ)
「GPSやカメラを使ったARといったスマホの機能も随所に取り込みながらも、楽しめるアプリ。ARがエンタメ性をもっともっと増していくということを体現しているアプリなんだな、と思う。ドライブ行くときは助手席で運転手気分を味わいながら楽しんでいる。映像を見て楽しだけでなくて、急停止の時などは“危険です”と警告を出すなど、運転が上手くなるような機能が盛り込まれていることもユニーク」

●プロダクト&ハードウェア部門:ビー・エム・ダブリュー BMWコネクテッドドライブ

BMW マーケティングディビジョン 田島崇氏
「BMWコネクテッドドライブは2013年の11月から日本でも本格的にサービスを開始した。車載の通信を活用して情報やエンターテインメントを提供するもので、BMWの“駆け抜ける歓び”をさらに広げてくれるサービスであると考えている。この春登場するBMW 「i」シリーズにとってもコネクテッドドライブはなくてはならない存在。日本ではスタートしたばかりだが、ニーズを的確に捉えて、より良いサービスに進化させていきたい」

選評 神尾寿氏(IT・自動車ジャーナリスト)
「最近は、輸入車でも先進の技術やサービスが日本市場にも分け隔てなく投入されている。今回、BMWコネクテッドドライブを選出したのは、もともと海外では蓄積のあったスマートフォン連携や通信モジュール付きの車載器など、先端機能を日本でも一般の方々が購入できる形で試せること。また(BMWコネクテッドドライブと連携する)スマホアプリの出来も良く、ユーザーに分かりやすい利便がある。テレマティクスというと日本メーカーが先導して牽引してきたが、グローバルなトレンドを日本にも持ち込んでBMWならではの魅力になっている」

●防災ソリューション部門:本田技研工業 ホワイトアウト予測情報

本田技研工業 グローバルテレマティクス部 益田卓朗氏
「開発のきっかけは、昨年の冬、北海道で猛吹雪のためにクルマのなかで亡くなられた方がいたこと。北海道の関係者との間で、“ホワイトアウトに困っている。何とかできないか”という話が持ち上がった。そこで日本気象協会から情報をのご協力をいただいて1月15日からサービスを開始した。大雪や吹雪は家にいるときは安全でも、移動するときこそ危ない。この機能は今のところ北海道限定だが、今後も皆様に安心安全に使っていただけるようにしたい」

選評 遠藤諭氏(角川アスキー総合研究所 主席研究員)
「私は新潟の出身なので、クルマのカルチャーは雪のある所とそうでない所で大きな違いがあるということを実感している。今回のホワイトアウト予測情報では、ホワイトアウトのコーション(警告)が出たり、あるいは家族にメールが行ったりする機能がある。こうしたサービスはこれから色んな広がり方をする可能性を秘めているし、スマホでクルマの世界が大きく変わるヒントを教えてくれている」

●最優秀賞:本田技研工業 SAFETY MAP

本田技研工業 日本営業本部営業開発室長兼インターナビ事業室長 清水保匡氏
「このSAFETY MAPはクルマやバイクだけでなく、自転車や歩行者にも提供している。インターナビの走行データから、急ブレーキ情報、警察の事故情報、NPO法人の方々が投稿できるかたちとして事故の起こりやすいポイントを可視化した。事故を削減したいと願う多くの皆様のおかげでサービスが成り立っており、埼玉県では事故対策などにも活用いただいている」

選評 三浦和也(レスポンス編集長)
「スピードを出して走っている場所が、スマホで手軽に分かる。地域住民が投稿のような形で地図上にデータをどんどん上げており、Google ストリートビューの映像付きでアラートを出す見せ方が秀逸だ。自社のプローブだけでなく、警察そして地域住民からの投稿などの声を持ち寄ったことでサービス開始から約1年という短期間でデータが蓄積でき、“見ると楽しい危険マップ”になっている。データの作成に参加している住民の皆さんも受賞に値すると思う」

●総評 夏野剛氏
「今年受賞されたサービス・製品はいわば“ネットが溶けている”ものが多かった。スマホの登場で、いろんなコンソール業界がネットに本格的に溶け込むようになった。自動車業界は早くからネットの良さを製品・サービスに取り込んできたが、今回はそれが特に顕著。ただ、UI/UIデザイン部門が該当なしに終わったのはちょっと残念。中身さえあれば付加価値を付けて売れるという風潮がまだあるのかな、と感じた。今後はUIの大切さがますます重要視されるはず。今後の関係者の取り組みが大きな成果をもたらしてくれることを祈念している」

《北島友和》

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