【オートモーティブワールド14】超高張力鋼をモノにする、日本のスゴ技は…マル秘

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エイチワンのスプリングバック対策技術を使った試作見本
  • エイチワンのスプリングバック対策技術を使った試作見本
  • 従来のプレス成型技術で780MPa材を成型した見本。直角に曲げたいが、開口部が広がっている
  • スプリングバック対策技術を用いてプレス成型した同材。キレイに直角に曲げられている
  • 1470MPaという超高張力鋼を冷間圧延したBピラー部品。シワやクラックもなく、キレイに成型されている

最近のクルマのボディでは高張力鋼板の採用が増えている。これは340~800MPaと、通常の鋼板の1.5倍から3倍近い引っ張り強度をもつものだ。高い引っ張り強度をもった鋼板を使うことにより、同じ剛性のボディを作っても薄肉化できることから、軽量化できるのがメリットだ。

しかしその反面、高張力鋼板は成形性が悪いので、プレス成型するのは大変だ。最近では引っ張り強度1000MPa以上もの強靭さを誇る超高張力鋼板という材料も登場しているが、それらの難加工性は当然、高張力鋼より悪いから、プレス成型の際に亀裂したりシワができやすい。

それに、強度が高くなるほどスプリングバックという現象が問題となってくる。スプリングバックとは、金型に押し付けた鋼板がバネ効果で反発して反り返ってしまうものだ。柔らかい鋼板やアルミ合金はその影響が少ないが、高張力鋼板では厄介な存在なのである。

そんなスプリングバックと戦い、寸法通りの成型をモノにしたのがエイチワン。同社はクルマの骨格部品やその金型をメインに生産する構造部品メーカーで、今回のオートモーティブワールドでは様々な加工技術を披露していた。

その中でも筆者の興味を引いたのがスプリングバック対策。従来技術では思った形状にできない超高張力鋼でも、狙い通りの形状に成型できると言う。しかし同社と新日鉄住金で共同開発しているそうだが、その他の加工技術と比べ明らかに地味な展示なのである。

金型の分割の仕方や寸法などのほか、張力の残し方に秘訣があるそうだが、試作見本以外はパネル展示もなければ、資料もない。当然、金型も展示されていない。というのも、特許を取得したり技術情報を披露してしまうと、一般的に金型は一目に触れないため、他社が技術を盗んでいるか特定することが難しいからだ。

自慢したい技術だけれど、詳しくは語れない…。ジレンマを感じさせるのが、最新の加工技術なのであった。

《高根英幸》

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