今年の日本カーオブザイヤー大賞は初めて輸入車のVWゴルフに輝いた。2位のホンダフィットに大差をつけての受賞なので、クルマの価値が多くの選考委員に認められたことになる。輸入車賞が設定されているにもかかわらず、国産車を負かした実力はたいしたものだ。
日本の自動車は長い間、日本の国民車である軽自動車に代表されるように、安くて壊れないクルマ作りを続けてきた。しかし、それだけではユーザーは振り向かないということが分かってきた。最近の日本車は軽自動車とハイブリッドしか売れないような状況となり、残りの市場をミニバンが占めている。しかし、欧州車のようにスタイリッシュで走りがよく、安全性と環境性も妥協がないクルマにも人気が集まっている。その代表的なクルマはVWのアップやポロやゴルフなのだ。メルセデスもAクラスというコンパクトクラスに積極的に参入し、日本での販売を伸ばしている。つまり、日本車が売れないと悩んでいる中で、200~300万円台の輸入車はよく売れている。
豊田章男社長が言うように「クルマは愉しくなければいけない」ということがだんだんと日本メーカーも分かってきたようだ。まだ輸入車から学ぶべきことは多いが、今年の10ベストに選ばれたクルマは、それぞれが独自の個性を持っており魅力に溢れていたと思う。
多少場違いな気がするクラウンとメルセデスSクラスも、今年のイヤーカーに大きな華を添えていた。大衆車から高級車まで、クラスを超えて年男を選ぶ日本カーオブザイヤーは世界中の自動車の文化のサロンとして捉えると面白い。大賞を受賞したメーカーも傲ることなく、また大賞を逃したメーカーも10ベストという名誉ある賞に誇りを持つべきであろう。30年近くも選考委員を務めていると、開票後でも、みんなが打ち解け、称え合うイヤーカーイベントこそが大切ではないだろうかと思う。私はホンダフィットに10点、VWゴルフに9点を与えた。日頃の論評通りの配点である。
イノベーションテクノロジーは三菱自動車アウトランダーのPHEVが受賞した。2モーターPHEVで電動AWD。自動ブレーキも備わり、300万円台のプライシングは立派だった。