宇宙航空研究開発機構(JAXA)が「D-SENDプロジェクト」を通じ、2020年を目標に技術の確立を目指す「ソニックブーム低減技術」とはどういうものなのだろうか。プロジェクトマーネージャーの吉田憲司さんは「機体形状でN型波形を変えること」と説明する。
超音速機によるソニックブーム(衝撃波)は、超音速で飛行する機体の先端が空気を切り裂く際に発生するマッハコーンと、機体後端の尾翼が起こす空気のかく乱で生じる。前方と後方で発生するために約0.2秒のタイムラグがあり、人間の耳にはこれが連続して爆発音のように聞こえる。グラフとして書いた場合、アルファベット「N」のように2回の山がある(機体先端で圧力が盛り上がり、後端で急激に落ちる)ため、「N型波形」と称される。
D-SENDプロジェクトでは、このN型波形を機体形状の見直しによって低減。衝撃波を分散して発生させることで超音速飛行で生じる圧力を弱め、結果としてソニックブームによる騒音も低減させることを狙いとしている。
戦闘機を含めた超音速機では、機体先端を円錐状にしているが、今回の試験機体では非軸対称のブーム機首を採用。主翼も途中から角度が変わる形状となり、機体下部には波打つようなわずかな凹凸をつけ、発する衝撃波を打ち消すようにしている。また、後胴(エンジン搭載部分)は平坦な形状となっており、逆キャンバ形状の尾翼とともに、衝撃波を低減させる設計となっている。