スマートフォンも広く普及し、毎シーズン、多くの新製品が発表されるようになった。スマートフォンのヘビーユーザーならば、新製品のスペックを見るだけで、実機に触らないでもどのようなスマートフォンかを想像できるが、しかしスマートフォンが初めての人やあまりコンピュータに詳しくない人は、スペックだけを見てもどのようなスマートフォンか、いまいちわからないことだろう。
スマートフォンの購入を検討するとき、店頭などで実機を触り、その感触を確かめることは重要だが、店頭に行く前に、まずはカタログに載っているスペックから、どのモデルが自分に適しているか、比較・検討をしておくことが好ましい。
今回は海外で発表されたばかりのサムスン電子製「GALAXY S4」と昨冬モデルながらも根強い人気のアップル製「iPhone 5」をピックアップし、この2機種を比較しながら、スマートフォンのカタログスペックの読み方を解説する。
■AndroidかiOSか、まずはそこが大きな選択肢
まずもっとも基本的なところで、GALAXY S4とiPhone 5では、採用するOSに違いがある。GALAXY S4のOSは、さまざまなメーカーのスマートフォンが採用する「Android」、iPhoneのOSは、アップル独自の「iOS」だ。AndroidとiOSにはさまざまな面で違いがあり、単純に比較するのは難しいが、ユーザーにとって大きな違いとなるのは、使えるアプリが違うということだろう。
GALAXY S4で使えるのはAndroid向けアプリだけで、iPhone 5で使えるのはiOS向けのアプリだけになる。かつてはiOS向けのアプリの方が種類が多いと言われてきたが、最近はAndroid向けアプリもiOS向けと同じくらい充実してきた。高機能な有料アプリはまだiOSの方が充実している傾向があるが、Androidではホームアプリや文字入力アプリといった、システムレベルの基本アプリも追加インストールできるという優位点もある。
たとえば、スマートフォンを隅から隅まで自分なりにカスタマイズしたい人は、Androidの方がおすすめだ。とくにGALAXYシリーズは、グローバルで広く展開していることから対応アプリも多く、カスタマイズもしやすい。一方のiPhoneは、ハードウェアからOS、コンテンツ配信ストアまでをアップル1社が開発・運営しているため、使い勝手が統一されているが、その反面、アップル製以外のホーム画面を利用できないなど、Androidスマートフォンほどカスタマイズに自由度がない。
AndroidとiOSはそれぞれに個性や特徴があり、単純に比較するのは難しい。どちらが良いかはユーザー次第なので、自分がどのようにスマートフォンを使いたいか、よく考えながら比較・検討をしよう。
■ディスプレイサイズは使い勝手に影響する最重要ポイント
スマートフォンにとって、もっとも重要な要素であるディスプレイも比較してみよう。GALAXY S4は約5インチの1920×1080ドット、iPhone 5は約4インチの1136×640ドットのディスプレイを搭載している。ドット数(解像度)は多い方が画面がキレイに見えるが、使い勝手にはそれほど影響はない。一方、インチ数(大きさ)は使い勝手に直結する。
GALAXY S4が搭載する5インチディスプレイは、現在のスマートフォンでは最大級のものだ。対するiPhoneの4インチディスプレイは、現在のスマートフォンとしてはかなりコンパクトな部類に入る。スマートフォンにとってディスプレイは、大きければ大きいほど見やすく、細かいタッチ操作もしやすくなる。ディスプレイが大きすぎると、片手での操作が難しくなってしまうので、現在は片手操作とディスプレイの見やすさを両立させた5インチディスプレイのAndroidスマートフォンが増えている。どのくらいの大きさのディスプレイが使いやすいかは、ユーザー次第なので、店頭などで実機を手に取り、比較しながら選ぶのがおすすめだ。
また、スマートフォン本体のサイズも重要なポイントだ。ディスプレイが大きければ大きいほど、スマートフォンは大きく、重たくなる。たとえば普通の折りたたみケータイは幅50mm程度が標準だったが、スマートフォンでは小ぶりのiPhone 5でも幅58.6mm、GALAXY S4は幅69.8mmと幅広になっている。ちなみに重さは普通の折りたたみケータイとは大差なく、iPhone 5が112g、GALAXY S4が134gだ。スマートフォンは毎日手にするものなので、ディスプレイサイズ同様に本体のサイズや重さについても、やはり実機を手に取り、比較することをおすすめしたい。
■アプリをサクサク使うために重要なプロセッサとメモリ量
次はプロセッサとシステムメモリの量を比較してみよう。プロセッサのクロック速度(GHz)やコア数、システムメモリの量は、いずれもスマートフォン上のアプリがどれだけサクサク動くかを決める要素だ。
GALAXY S4のプロセッサは、1.9GHzのクアッドコア(4コア)と1.6GHzのオクタコア(8コア)の2種類のスペックが発表されている。システムメモリは2GBだ。日本向けモデルがどのスペックになるかは不明だが、どちらにせよ最新のスペックと言える。対するiPhone 5は、細かいスペックは公式発表されていないが、システム解析から、プロセッサはデュアルコア(2コア)の1.3GHz、システムメモリは1GBを搭載すると推定されている。
プロセッサとシステムメモリの比較では、GALAXY S4の圧勝だ。しかしiOSは複数のアプリを同時に動作させるマルチタスク機能に制限があるため、もともと高性能なプロセッサや大きなシステムメモリを必要としない、という見方もできる。また、そもそもカタログに表記されるプロセッサの性能は、高負荷が掛かった瞬間に発揮される最高性能で、通常時は省電力のためにプロセッサの速度を落として動作するようになっている。普段の利用ではあまり差はでないところだが、それでもアプリの起動時やWebページを表示するまでの時間など、プロセッサの速度はいろいろなところにちょっとずつ影響している。一方のシステムメモリについては、Androidの場合、アプリをたくさん使いこなすようになると、システムメモリが足りなくなりがちなので、システムメモリは2GB以上のモデルがおすすめだ。
■忘れちゃいけない、バッテリーの持ちも比較
内蔵バッテリーの容量も比較してみよう。スマートフォンは従来のケータイに比べると高性能で頻繁に利用することもあり、バッテリー消費は格段に大きくなる。そのため、内蔵バッテリーの容量も、スマートフォン選びでは注目するべき重要な要素だ。
GALAXY S4は2600mAhのバッテリーを内蔵している。対するiPhone 5は、公式発表はされていないが、分解調査などから約1400mAhのバッテリーを内蔵していることが判明している。
バッテリーを容量だけで比較すると2倍近い差があるが、実際に利用できる時間に2倍の差があるわけではない。iPhoneはマルチタスク機能を制限するなど、Androidスマートフォンよりも省電力な設計となっているので、小さな容量のバッテリーでも十分に利用に耐えることができるとされている。しかし実際には、iPhoneのヘビーユーザーの中には、このバッテリー容量に不満を持ち、外部バッテリーを併用している人も少なくない。
一方のGALAXY S4の2600mAhのバッテリーは、ほかのAndroidスマートフォンと比較しても、大きめの容量だ。どのくらいのバッテリー容量が必要かは、使用頻度や使うアプリによって違ってくるが、大ざっぱに言うと、Androidスマートフォンなら2500mAh以上の容量があれば、そこそこ使っても1日は持たせられるはずだ。それでも足りない場合は、使用頻度が高すぎるか、使っているアプリに問題がある可能性があり、その場合、ユーザー自身が改善しないと、どんな大容量バッテリーでも対応しきれない。バッテリー容量は大きいに超したことはないが、いくら容量が大きくても、省電力を考えずに済むわけではないことを覚えておこう。
■ワンセグやおサイフケータイの対応はAndroidならでは!
GALAXY S4はグローバルモデルとして発表された段階で、日本での発売については発表されていないが、これまでのGALAXYシリーズを例に考えると、GALAXY S4もワンセグやおサイフケータイといった、日本独特の仕様に対応した上で、日本で発売される可能性が高い。
GALAXY S4などのAndroidスマートフォンとiPhoneを比較すると、これら日本仕様の有無が大きな違いとなる。iPhoneは全世界ほぼ同一仕様のまま展開しているので、日本独自の仕様に対応する可能性は低い。
iPhoneでも、たとえばワンセグは周辺機器を使えば視聴できるし、おサイフケータイもカードを持てば代用できる。そのような周辺機器が充実しているのも、iPhoneの魅力だ。しかし周辺機器で代用できるとしても、やはり内蔵していた方が使いやすいことがほとんどなので、ワンセグやおサイフケータイを良く使う人は、最初からそれらの機能を内蔵しているモデルを選ぶのがおすすめだ。
■「使いやすさ」を重視して選ぼう
実際にスマートフォンを選ぶにあたってもっとも重要なポイントは、「使いやすさ」ということに尽きる。大きさやバッテリー容量、デザインやアプリの使い勝手など、人によってスマートフォンを「使いやすい」と感じるポイントは異なるので、単純に比較して「このスマートフォンが使いやすい」とは断言しにくい。
スマートフォンは、手にして使ってナンボの機器である。どんなに優れた性能を持っていても、カバンに入れっぱなしでは意味がない。ちょっとした空き時間にもすぐに取り出して使いたくなるような、そんなスマートフォンを選ぶようにしよう。