スマートフォーツーの電気自動車であるエレクトリックドライブが2012年12月に発売された。
ガソリン車のスマートフォーツーを電気自動車化したクルマで、街乗り用のシティコミューターを前提に作られている。なので出先での急速充電で航続距離を伸ばすのではなく、夜間の普通充電だけで昼間に近場を走るという考え方だ。
航続距離もJC08モード走行で140kmと短めで、余裕を持って使えるのがその半分だとしたら、70kmくらいの距離を走るためのクルマということになる。近場の街乗り専用として考えたら、70kmでも十分すぎるくらいの数字である。
これ1台ですべてを間に合わせようとするのではなく、セカンドカーとして使うことを前提に選ぶクルマと考えたら良い。
ガソリン車のスマートも近場を走ることを前提にしたクルマで、高速道路を使って長距離を走るためのクルマではないから、そもそもスマートのコンセプトは電気自動車に適したものだった。その近場をゼロエミッションで走れるのがスマート・エレクトリックドライブの良さだ。
外観デザインは基本的にスマートフォーツークーペと変わらない。試乗車はホワイト/グリーンのけっこう目立つ2トーンカラー(オプション)だったほか、ボディサイドに英字でエレクトリックドライブの文字と、電気プラグの絵が描かれていた。これを見ると電気自動車であることがすぐに分かる。
走りの元気良さは電気自動車ならではのものがある。発生するパワー&トルクは動力性能は55kW/130Nmで、トルクに関してはターボ車以上の実力を持つ。しかも電気モーターの特性で最大トルクを発進直後から発生するから、相当に元気の良い走りも可能になる。
その気になってアクセルを踏み込めば、0-100km/h加速を13秒で走り抜け、最高速も130km/hに達するという。まあそのような走り方は電気自動車にふさわしくないので、いっぱいの加速などは決して勧めないが、静かで走り出し、滑らかかつ力強く加速が伸びている感じは、電気自動車ならではの特徴である。
スマートのガソリン車はセミATを採用するために変速時のトルク抜けが発生して走りがギクシャクしがちだが、エレクトリックドライブにはそのギクシャク感が全くなく、切れ目や段差のないスムーズで直線的な加速が可能だ。
ブレーキは油圧式で電動ポンプによって油圧を発生させる仕組み。アクセルから足を離したときや、ブレーキペダルを踏んだときには回生ブレーキが働くが、その強さはステアリングの裏側に設けられたパドルによって加減できる。
個性的なデザインや街乗りに適したパッケージングなど、スマートが持つ基本的な良さをスポイルすることなく、電気自動車のスムーズで力強い走りを得たのがエレクトリックドライブである。
295万円の価格はガソリン車のベースグレードと比べると2倍に近いし、購入時には充電設備を用意する必要があるが、52万円の補助金(2012年度時点)が受けられることを考えると、かなり現実的な選択肢になる。EV専用の71か月間のメンテパックが15万9000円で用意されているので、これに加入すると良い。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。