1997年にメルセデスベンツの乗用系としては初のFF車として登場したのが初代の『Aクラス』。
今回のフルモデルチェンジは2回目で、新型は3代目となる。初代Aクラスは床下に電池などを収める予定だったため、非常に高い車高(1600mm)となっていた。2代目も同様のプラットフォームを使ったため、ほぼ同じ全高を持っていた。
しかし新型はこのプラットフォームに別れを告げ、すでに発売されているBクラスとプラットフォームを共有。結果として標準タイプで160mmもの車高減に成功している。車高は低くなったものの、車幅は15mm、全長は標準タイプで440mmも拡大された。初代の標準タイプと新型スポーツタイプの全長差はなんと740mmにもなる。
新型に乗り出した瞬間に感じることは「ぜーんぜん違う」だ。うなずいて「うむ違う」なんてもんじゃない、先代と比べてあきれちゃうぐらいに「ぜーんぜん違う」のだ。
先代モデルは車高も高くて、足まわりも固く、ヒョコヒョコとした動きをするクルマだったが、新型は一本ビシッとスジが通っていて安定感に富む。車高を大幅にダウンしているのだから、当然といえば傲然の結果だが、目線が低くなりドライバーズシートに座ってフロントウインドウ越しに見える風景も違うので、イメージはまったく異なるクルマだ。
今回試乗したモデルはA180ブルーエフシェンシーとA180ブルーエフシェンシー・スポーツというグレード。搭載されるエンジンはいずれも1.6リットルの4気筒ターボで122馬力を発生する。ミッションは7速のツインクラッチタイプATが組み合わされる。スポーツはエアロパーツやレザーシートの装着が行われるほか、スポーツサスペンションなども装着され、乗り味が異なる。
低回転から高トルクを発生するエンジンは、発進から力強い加速を示してくれる。ツインクラッチ方式のミッションは、スムーズな変速で息継ぎ感もない。1.6リットルとはいえターボの装着によって200Nmのトルクを得ているだけに走りのポテンシャルは高く、その性能はあなどれない。
先代モデルや現行のBクラスに比べて、細かい振動までしっかりと吸収するようになったサスペンションのおかげで、乗り心地もいい。A180ブルーエフシェンシー・スポーツはA180ブルーエフシェンシーよりも引き締まったサスペンションが与えられているが、乗り心地に不満が残るようなことはない。スポーツはステアリングを切ってからすぐにスパッとクルマが向きを変えるが、これはサスの設定だけでなくステアリングギヤ比がクイックになっていることも大きく影響しているはずだ。
ベーシックなA180ブルーエフシェンシーであっても、各種安全デバイスや、レーダークルーズコントロールなどの充実した装備を備える。加えてメルセデスベンツという揺るぎないブランド力でありながら、価格は284万円という設定。国産車にも危機感を与えるほどの存在だ。
5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。