【タイで働く女性たち】タイの社会と真っ直ぐ向き合って生きていきたい…栗原宏美さん

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タイで働く女性たち 第12回 バンコク伊勢丹で健康枕を販売する栗原宏美さん
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タイで働く女性たち 第12回 バンコク伊勢丹で健康枕を販売する栗原宏美さん


タイ社会と向き合って生きたい

「Hiromi、貴女はタイで生きていくことに決めたのだから、タイの文化に接したほうがいい。私がお寺に連れて行ってあげる」

バンコクに来て間もないころ、知り合ったタイ人に寺に連れて行ってもらったことがある。多い時は週に1~2回も。以前は「宗教なんて…」と思ったこともあったが、通ううちにそんな気持ちはなくなった。寺には今でもちょくちょく通う。ご先祖様のこと、両親のこと、支えてくれる周囲の人たち、みんなの健康と笑顔を祈っている。

「自分が暮らしているタイの社会と真っ直ぐ向き合って生きていきたい。斜めから見るようなことではなく、堂々と真っ正面から」。そのことが大事と常々思うようになった。

「やればいいじゃない!」 日本にいたころ、自分に全く自信が持てなかった。何をやっても長続きしない。アルバイトも3日で辞めてしまうことの繰り返し。学校で同級生だった友達はどんどんキャリアを積んでいくというのに…。

10数年前にナポレオンヒルの「成功哲学」という本に巡り会ったことがある。「思えば、それが叶う」と書いてあった。半信半疑だったが、取りあえず、「35歳までに会社を作る」と紙に書き、自室の壁に貼った。

だが、それでも何も変わらなかった。そうした時、タイで起業したという人と知り合う機会を得た。一通り話し終わった後、彼は言った。「で、君はこれからどうしたいの?」

「会社を興してみたいと思っているのですが…」。恐る恐る、絞り出すようにそう言うと、返ってきたのは「やればいいじゃない!」という言葉だった。

「日本人恐怖症」だった私 東京・北区の商店街を歩いていた時のこと。枕を売っている店舗が自然と目に止まった。以前見た自分が枕売りをしている夢と重なった。「これだ!」。店に飛び込み、海外進出に興味があるか聞いてみた。とんとん拍子に話しが進んだ。気が付いたら、タイのバンコク伊勢丹で檜枕を売る自分の姿があった。8年前のことだった。

何回かイベントを重ね、タイと日本を往復するうちに、権利を譲ってもらえることになった。思い切って自分の会社「K RISE(THAILAND)」を立ち上げた。2005年5月のこと。檜枕、低反発枕、パイプ枕など品数を揃えて店舗に並べた。顧客の95%はタイ人。

どうにか会社を作ることはできた。だが、タイの日本人社会にはなかなか溶け込めなかった。コンプレックスから「日本人は面倒くさい」と思い込んでいた。日本人と関わり合うのが嫌で、仕事の後の時間はもっぱらタイ人の友人と過ごした。「日本人恐怖症」だった。

素晴らしい出会いに感謝 タイ王国和僑会の社会貢献活動。起立左が栗原さん。

転機となったのは、今から3年ほど前。わずかな知り合いから誘われて参加した勉強会がきっかけだった。タイで暮らす日本人起業家らでつくる「タイ王国和僑会」。最初は緊張の連続だったが、人格の素晴らしい起業家らと交流を重ねるうちに、次第に和んでいく自分を感じた。

「日本人でありながら日本人社会から逃げて生きている自分に違和感を持つようになっていました。どうにかして自分を変えたい、そういう気持ちが日に日に強くなっていたのです。初めの一歩を踏み出すことのできた素晴らしい出会いに、感謝しています」

今では「タイで死んでいくつもり」と、はっきり言える。お世話になったタイ人、日本人に恩返しがしたい。今後10年以内に、あと5つ、会社を立ち上げたい。そして最後にもう一つ。会社を継いでくれるタイ人スタッフを育ててみたい。

タイで生活する日本人は最新の2012年統計で約5万人。企業などの駐在員や永住者、その家族などが多くを占め、滞在する男性の多くが仕事を持って暮らしている。女性についてはビザの関係から就労が難しいと一般的に理解されているが、実は、働く女性は決して少なくない。新企画「タイで働く女性たち」では、タイで仕事に就き、活躍する女性たちを追う。

タイで働く女性たち 第12回 バンコク伊勢丹で健康枕を販売する栗原宏美さん

《編集部》

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