【洗車の新常識】イノベーション起こすブラシで「魅せる洗車」

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ハンディ・クラウン専務取締役の津久井克行氏
  • ハンディ・クラウン専務取締役の津久井克行氏
  • モータージャーナリスト/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の青山尚暉氏
  • ブラシテストのようす
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  • ハンディ・クラウン専務取締役の津久井克行氏
  • モータージャーナリスト/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の青山尚暉氏
  • ハンディ・クラウンが手がける化粧用ブラシ。こうした繊細な製品の製造ノウハウを洗車用ブラシに応用。

これまでクルマを洗う道具はスポンジやタオルだった。ブラシを使ったとしてもタイヤやホイールなど下回りに限定されていた。

しかし、ボディを含めたクルマ1台丸ごと、ブラシで洗えるシステムがまもなく完成するという。

その洗車ブラシのブランド名は新『B&Y』。創業大正3年のハンディ・クラウンが手がける。今年で98年を迎える同社は、自社ブランドの刷毛・ローラーをはじめ、塗装関連、カー用品及び周辺用品、老舗洗車ブラシメーカーの商品まで幅広く取り扱う専門メーカーベンダー。2008年にカー用品営業部を立ち上げ、そこで扱ってきた洗車用ブラシである。

製造元は大正10年創業の老舗洗車ブラシメーカー、マルテー東北石橋。ボディに優しいブラシ素材と黒と黄色のカラーリングが特徴のロングセラー商品であり、多くのファンがいるという。

洗車業界にイノベーションを

現在、開発中のものはまったく新しい概念に基づいてつくられている。新B&Yシリーズについて、開発プロジェクトをとりまとめるハンディ・クラウン専務取締役の津久井克行氏と、アドバイザーとしてプロジェクトに参加している、モータージャーナリスト/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の青山尚暉氏に話を伺った。

---:まずは今、なぜ、ブラシ洗車なのでしょう。

津久井:わたくしどもは20年ほど前からB&Yというブランドの洗車ブラシを扱ってきましたが、そのブランドを”ブラシ革命”というと大げさですが、復活させたいという思いがありました。洗車関連としては、店頭では廉価なスポンジがメイン。ブラシはタイヤをはじめ、下回りだけを洗う用品のイメージでした。しかし我々はブラシメーカーです。洗車のアイテムをスポンジからブラシへ。そんな革命を起こそうとしているのです。

---:これまでのブラシとどう違うのですか。

津久井:多くのブラシはみんなカタチが同じで、柄に穴が開いている通水タイプが主流です。が、新B&Yシリーズはハンディタイプで、メインのボディ用ブラシは柄がなく、軽く柔らかく、スポンジと同じような使い勝手になっています。東北・仙台の工場で生まれたそのデザインは画期的なものといえます。

---:プロジェクトチームについて教えてください。

津久井:今回のプロジェクトが発足したのは2011年の夏ごろです。メンバーは社内社外を含め8名。中には販売促進部門の女性もいますし、20年前にB&Yを立ち上げ、カタログをつくっていた会社のメンバーもいます。この1年、月に何度も会議、打ち合わせを重ね、また日々、テストを繰り返しています。

---:新B&Yシリーズのブラシにはどんな種類があるのでしょう。

津久井:ラインナップは5~6種類あります。メインのボディ用から隙間用、ハイルーフ用、タイヤ用、ホイール用などが揃っています。洗う部位に合わせて機能、性能をしっかりと分けているのが特徴で、ハイルーフ用はミニバンなどの高いルーフ、大きなボンネットを洗うにも適しています。1度に洗える面積が大きく、スポンジなどを使う半分近くの時間で洗車することができるメリットもあります。

女性、ライトユーザーにも理解しやすい汎用性

---:ターゲットユーザーは。

津久井:スポーツカー愛好家など、クルマ好きの人や洗車のプロはもちろんですが、性能だけでなく、扱いやすさ、親しみやすさもまた新B&Yシリーズの個性で、持ち手がやわらかく、ゴツさのないデザインなので、女性やこれまで洗車に興味がなかった人にも受け入れてもらえると思います。

---:モータージャーナリストの青山尚暉氏に開発プロジェクトに参加してもらった理由は。

津久井:私も洗車好きですが、青山氏もかなり洗車にこだわりを持っています。いろいろお話をしているうちに、マニアックすぎると感じたこともありましたが(笑)。洗車歴38年、自動車業界で幅広く活躍されているノウハウを存分に生かしてもらい、商品づくり、テストをお願いすることになりました。

青山:クルマ全体を洗えるブラシを作りたい、これまでの常識を覆す。そんな津久井氏の発想、夢に共感したことが、プロジェクト参加の大きな理由です。なんとしてでも、成功させようと思っています。

---:アドバイザーとしてプロジェクトに参加している青山氏から見た新B&Yシリーズはどのような製品なのですか。

青山:まったく新しいブラシのデザインを始めて見たとき、正直言って感動しました。こんな素敵なブラシがあるのか!と。握り心地、作業性も新しい。今までのブラシはボディをキズつけかねないイメージがありましたが、実は私は昔から十数種のマイブラシを持っていて、その中に偶然、B&Yのものもあったのです。そのブラシでスポンジやタオルで洗えない部分を洗っていたのです。細部のブラッシング洗車ですね。クルマは隙間や凸凹だらけですから、ブラシがないとキレイにならないことはずいぶん前から分かっていました。しかし、ボディ全体を洗えるブラシの開発のお手伝いをできるということには驚きました。

津久井:青山氏とは洗車、ブラシの話でいつも盛り上がっています。ブラシの製造メーカーと、洗車好き小僧のまま大人になったような青山氏が偶然出会い、お互い、いいカタチで理解し合え、思いが一致した、ということです。

販路は模索、タイミングを見て拡大

---:国内自動車市場はもはや保有市場。1台のクルマを長く乗り続けることが常識になっています。古くなったクルマ乗り続けるには、常にキレイな状態に保つことが欠かせません。新B&Yシリーズと市場のニーズは合致しそうな気がします。新しい市場開拓の可能性もあるように感じます。新たなブラシの販路は。

津久井:販売当初は、ホームセンター、アマゾンなどの通販が中心となりますが、今後、カー用品専門店やカーショップ以外のセレクトショップ的なお店での販売も検討しています。これまでのブラシとはイメージがまったく違うからです。高機能ツール=洗車ブラシという新しい提案であり、これまでのブラシのイメージを変えるものと自負しています。また、ガレージの中で際立つ存在でもあるので、自動車メーカーにも積極的に提案していきたいですね。

---:これまでにない発想だけに、開発に苦労した点がありそうです。

津久井:仙台の工場では洗車ブラシ、コートブラシ、各種洗浄ブラシなど多岐にわたり製造しているのですが、まずはスポンジに代わるブラシを提案してもらいました。すると面白いデザインが出てきた。ブラシは最初3行でしたが、今では4行になりました。機能、洗浄能力、洗い心地などをテストした結果です。もっとも、開発当初は塗装面に目立つキズつきを作ってしまうこともありました。スポンジであれ、タオルであれ、塗装面は擦ると必ず微細なキズはつくのですが、我々はスポンジレベルの安全性を目指してきたのです。ボディへの優しさは毛の素材、硬さ、長さ、腰など、さまざまな要素を積み重ね、吟味することで達成できるのですが、新B&Yシリーズは、よりキズつきにくい水を含みやすいストロー状の中空繊維を使い、塗装へのアタックを低減するため毛先を丁寧に割っています。仙台からサンプルが送られてくると、すぐに青山氏に実車テストしてもらい評価を聞き、社内で電子顕微鏡を使って検証、その連続の1年でした。

洗車がエンターテインメントに

---:青山氏は具体的にどのようなテストを行なってきたのでしょう。

青山:テストは四季を通して行なってきました。季節、気温によって塗装表面の状態、ブラシ洗いした結果が違ってくるからです。水洗い後、シャンプーを併用してソフトにブラッシング洗いするのが使い方の基本ですが、自動車塗装より柔らかいアクリル板、さまざまなボディカラーと車齢の実車によるテストを行なっています。さらに知り合いの洗車のプロにも使ってもらい、意見を聞きます。あるプロは、カタチ、黒と黄色の色づかいが特徴的で、このブラシを使うことで洗車がお客さんの注目を集めるエンターテインメントになる!と嬉しい反応を得たこともあります。

---:ブラシ以外のアイテムも用意されていますか。

青山:専用シャンプーやクロスなども開発中です。とくにクロスはブラシ同様、使う部位に合わせているのが特徴です。まだ多くは語れませんが、これまでにない発想で。洗車好きの私としてはワクワクする開発作業です。

---:最後に新B&Yシリーズにかける思いを聞かせて下さい。

津久井:まずは日本でボディを優しく柔らかく洗えるブラシによる洗車イノベーションを起こしたいと思っています。プレ発表は8月第3週に幕張メッセで開催される「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2012」のハンディ・クラウンのブースにて行ないます。正式発表・発売はその先になりますが、そこでみなさんに見て、触れて、実際に使っていただき、その反応を最終的な商品に反映したいと思っています。

青山:塗装面へのキズつき性に関してはほぼクリアしています。これからもさらに優しく、柔らかく、キズつきが最小限になるよう、チューニングしていきます。モノづくりの苦労、やりがいを今、実感しているところです。

《まとめ・構成 土屋篤司》

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