【EV・PHVオーナー座談会】いま環境車はファーストカーたり得るのか?

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クルマのエネルギーソリューションに欠かせない技術の一つ、電動化。その電動化技術を採用したクルマの普及が、この日本でも始まっている。

2009年に三菱自動車『i-MiEV』、翌2010年に日産自動車『リーフ』と、リチウムイオン電池を搭載する新世代EVが相次いで登場。2012年2月には充電可能な大型バッテリーを搭載し、短距離ならばEVとして走ることができるプラグインハイブリッドカー(PHV)、トヨタ自動車『プリウスPHV』が登場した。ホンダ、三菱自も今年度にPHVの発売を予定するなど、今後さらに選択肢は増える見通しだ。

メーカーのコストダウン努力、手厚い購入補助金制度などによって、一般ユーザーにとっても実際に購入対象となり得るようになったEVやPHVだが、果たして実際に購入すると、カーライフがどのように変わるのか。また、EVで心配される航続距離の短さ、PHVの経済効果などはどれほどのものなのか。現在購入可能なi-MiEV、リーフ、そしてプリウスPHVの3モデルのオーナー6人が意見を戦わせた。

(参加者プロフィール)

井川さん 所有車:リーフ 自宅は埼玉県川口市の戸建て。妻、子3。ホンダ『ラグレイト』から代替。三菱『アウトランダー』と併用。EVは自宅と駅、塾など短距離主体で使用。

丹野さん 所有車:リーフ 自宅は東京都内の戸建て。妻、子1。日産『プリメーラ』から代替。1台保有。用途は主に自宅近辺の送迎、買い物など。

桑原さん 所有車:i-MiEV 自宅は東京都練馬区の戸建て。妻、子2。BMW7シリーズから代替。トヨタ『エスティマ』との2台保有。EVは往復70kmの通勤を主体にファーストカーとして使用。

山崎さん 所有車:プリウスPHV 自宅は東京都町田市の戸建て。妻、子2。アウディ『A4』から代替。1台保有。用途は主に往復80kmの通勤。

大木さん 所有車:i-MiEV 自宅は埼玉県上尾市の戸建て。独身。軽貨物車と2台保有。買い増し。EVはファーストカーとして近場からロングドライブまで使う。

司会進行 レスポンス編集長三浦 所有車:プリウスPHV 自宅は神奈川県川崎市の戸建て。妻、子2。1台保有。ベンツ『Cクラス』から代替。主な用途は買い物や送迎でロングドライブもあり。(以下参加者敬称略)

■EV、PHVを買った理由

三浦:では最初になぜEV、PHVを買ったかという動機から始めましょう。私がプリウスPHVを買ったのは、もともと電動車両が好きだったからです。レスポンスの編集長をしていることから、いろいろなクルマに乗る機会がありますが、静かなEVの乗り心地に魅力を感じていました。信号で停まるときにシーンとする感じや、走行中に窓を開けてもエンジン音がしない感じが非常に好きなのです。ただ、EVを買うとなると必ず充電しないといけない。それを妻にいちいちやらせるのは難しいかなと思い、普通のクルマとしても乗れるPHVにしました。

井川:私は以前、大型ミニバンに乗っていましたが、それをEVにしたのはやはり排気ガスを出さないということが一番の理由でした。山登りではゴミを出さないという精神がありますよね。それと同じで排気ガスを出さないことはとても大事だと思っていました。私は埼玉県川口市の寺で住職をやっているのですが、せっかく寺社仏閣にお参りをするなら無公害なほうがいいと思います。和歌山の高野山にもリーフで行きましたよ。

丹野:うちの場合は2011年、妻が長く乗ったガソリン車のマイカーを狭い道のすれ違いでゴリゴリ引っ掛けて修理が必要になったのが買い替えのきっかけでした。日産プリメーラ、10年くらい乗っていました。昨年、家を新築したのですが、震災への備えという意識で屋根にソーラーパネルを設置しました。そこで、クルマを買い替えるならばEVにしてみようということでリーフを買いました。

三浦:スマートハウスとEVとは、組み合わせがいいですね。

丹野:今年の夏はソーラーパネルの電力をリーフのバッテリーに蓄えて、必要なときにその電力を家に送るシステムが使えます。ピークシフトで昼間の電気代が高くなるなら、それもありがたいなと。

桑原:私がi-MiEVを買ったのは、試乗がきっかけです。昔からクルマが趣味で、18歳で免許を取ってから30年近くの間、30台以上のクルマに乗り継いできました。前に乗っていたのはBMW7シリーズでエンジンは4.5リッターV8だったのですが、こんな大型車を一人で転がしていていいのかという疑問が頭をよぎるようになりました。そんなとき、EVがクローズアップされました。『レバ(REVA)』というインド製のおもちゃみたいなEVが売られていると聞いたので、試乗が可能という浜松まで出向いて運転してみたら、せいぜい時速60kmくらいしか出ないのに、その面白さに衝撃を受けました。2008年のことでした。

丹野:でも実際に買ったのはi-MiEVなのですね。

桑原:さすがにエアコン、安全装置なし、ゴルフ場のカートみたいなのが200万円以上というのではね。そう思っていたところに、三菱がEVを発売するという情報を得て、横浜で行われていたEVフェアに飛んでいきました。そのときは一般販売が始まっていなくて、翌年7月末の予約開始の日に朝一番で予約しましたよ。納車はそれから1年後の2010年6月。ようやく念願のEVに乗れるようになりました。

大木:私は震災直前の2011年2月、i-MiEVを買いました。昔からEVに興味があったんですが、コンバージョンEV(エンジン車改装型EV)は加速が悪いなどと聞きました。そんな折、i-MiEVが発売されました。普通のクルマとして何の不足もなく乗れるなら、もうEVだと思って買いました。

三浦:では、震災後の混乱はEVで乗り切った、と。

大木:震災のときにはガソリン不足で普通のクルマに自由に乗れませんでしたよね。私は身障者施設に仕事で出入りしているのですが、EVで食料や資材を届けることができました。その後、EVは電気を使う悪者みたいにも言われましたが、有効性は確かにありました。

三浦:なるほど。今回の座談会はEVオーナーが4人、PHVオーナーが私を含め2人。PHVのほうはプリウスPHVがトップバッターとして発売されたばかりでまだ数が少ないのですが、山崎さんがPHVを購入した理由は?

山崎:私はアウディA4からの買い替えでプリウスPHVを買ってみました。アウディは高速道路を走るととても気持ちがよかったのですが、その前にエスティマハイブリッドに乗っていたことから、渋滞中にアイドリングストップすればいいのにという思いがあった。昨年の東京モーターショーでPHVが発売されるのを知り、補助金も出るということでプリウスPHVを買いました。

三浦:EVは考えなかったのですか?

山崎:以前、i-MiEVを購入するつもりで試乗したことがありました。しかし中学生の息子が野球をやっていて、山梨や千葉に遠征に行ったら無充電では帰って来られないかもという懸念があって断念しました。プリウスPHVを買う時にも航続距離などをもう一度検討しました。結果、ウチの場合はPHVが使い勝手はいいかなと考えたわけです。

■EV、PHVはファーストカーたり得るのか

三浦:EVやPHVはまだ出てきたばかりの新しいエコカーです。とくにEVは航続距離が限定されるため、1台だけでは事足りないのでは、という懸念もあります。日常の使い勝手について聞かせてください。

丹野:私はリーフ1台保有ですが、基本的には充分足りています。妻が買い物や幼稚園の送り迎えで使うというのが主な用途ですが。EVで足りるかどうかはクルマの使い方次第です。家の近所など近距離主体なら、1台しか持てない場合でもEVはお勧めできると思います。

三浦:長距離を乗ることはないのですか?

丹野:一応ありますよ。実家が岩手県で片道600kmほどです。実はEVを購入する際にPHVも検討しました。かなり迷ったのですが、冬に帰省する時は積雪もあるので新幹線を使いますし、結局クルマで帰るとしたら夏の往復の2日間。1年の1%以下のためにEVにしないのもどうかと思い、割り切りました。

大木:私も1台で大半は足ります。航続距離が心配ということで2台保有をしているのですが、i-MiEVを買ってからというもの、エンジン車を走らせる機会はほとんどなくなり、乗るのはいつもEVです。ちなみに用途は近距離が主なのですが、EVでどこまで行けるのか、ロングドライブにもチャレンジしています。越後湯沢、日光あたりをドライブしてみました。

井川:私も近場ならEV(リーフ)で十分だと思います。もう1台のアウトランダーは滅多に使いません。ただ、時間がタイトな中で遠くに行く用事ができた時のことを考えると、普通車も手放せないですね。先日、できたばかりの新東名を通って愛知まで行ったのですが、リーフだと1時間走ったら30分充電しないといけないということで、やはりアウトランダーを使いました。ただ、経済性はEVのほうが圧倒的に良いので、普段はガソリン代節約のためにも、できるだけリーフに乗るようにしています。リーフでは1万1000km走りました。

桑原:私も日々の通勤を含めてほとんどEV(i-MiEV)しか乗りません。2010年夏に納車されてから4万2000kmほど走りました。またリーフもレンタカーを使ったりオーナーから借りたりして3000kmほど乗りました。今もガソリン車のエスティマを持っていますが、動かすのは1年に数回。もう要らないかなと思うこともありますが、手放すのももったいないので手元に置いてあります。

■EVモードとHVモードの二段構えが頼もしさに

三浦:PHVのほうは私と山崎さん、双方とも1台保有ですね。EV走行距離は短い(JC08モード走行時で24.4~26.4km)ですが、エンジンを装備しているのでEV走行が終わってもハイブリッドカーとして普通に乗れます。

山崎:それは便利なポイントですよね。トヨタのディーラーでは1時間まで無料で充電してくれるのですが、出先での充電にはあまりこだわっていません。ハイブリッドカーとして普通に燃費良く走れますからね。もっとも職場の駐車場には充電設備があるので、通勤時はやはりそれを利用します。通勤距離は片道40kmなので、往路、復路それぞれ半分はEV走行です。

三浦:私の場合、普段は妻が買い物や子供の送り迎えに使うのですが、その範囲だとエンジンを使うことは滅多にないです。初めて初期型のi-MiEVに乗った時、静かで速くて刺激的なことに感激して、それ以降EVが大好きになったのですが、マイカーをEV1台でとなると自信がなかった。取材で日産からリーフを借りたとき、火曜日に充電ができる日産のディーラーが定休日で全部閉まっていました。夜と火曜日はディーラーでは充電できないのですね。もちろん充電スポットは他にも沢山あるので、私は平気ですが、妻にとってはハードルが高くて不満が出そうだった。それでPHVにしたというのもありました。

丹野:PHVのバッテリーの容量がもっと大きくてEV走行距離が長ければいいのにと思ったこともありました。

■クルマとの新たな関係性の構築

座談会参加者は、EV・PHVの所有により、自身がどのようにクルマを使い、どのようにエネルギーを使うかという、自己分析を自然に実践している。さらには考え方、経済性、環境配慮に至るまで、EV・PHVとの関係の構築は、生活に対する意識変革のきっかけにも結びついているといえる。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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