「私としては、明日から参加するホノルルAPEC首脳会合においてTPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることとした」
野田佳彦首相は11日夜の官邸での記者会見で、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に対する意思を表明した。
TPP参加に強い意欲を持つ野田首相だが、交渉参加と断言せず、関係国との協議に入るという表現にとどめたことは、反対する勢力に配慮した結果だと言われている。このことを問われ、野田首相は次のように答えた。
「昨年11月に包括的な経済連携の基本方針をまとめた中で、TPPについては情報収集のための協議ということだった。その段階をさらに歩みを前に出すことで、TPP交渉参加に向けての協議という位置づけになっている」
TPP参加には、民主党内だけでも142人の国会議員の反対署名が集まり、その声は日増しに強くなった。党内の経済連携PT(プロジェクトチーム)は、50時間以上を費やし、20回以上の議論を重ねたが、ここでの提言も、反対派に配慮せざるを得なかった。
「前原政調会長から報告をしてもらったが、APECにおいて交渉参加の表明すべきかについて、時期尚早であるというのと、表明すべきでないという意見と、表明すべきだという意見があり、前者の方がその意見は多かった。したがって、慎重に対応をという提起があった。その提起を踏まえて熟慮した」
野田首相は基本的なTPPのメリット/デメリットについては説明ができたとの考えだ。ただ、週明けには反対派に向けた説明のために議員懇談会を開く方向で調整している。国会審議や国民への説明は、今後も続ける。
会見では、次のように反対派の懸念を否定した。
「世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、美しい農村は、断固として守り抜き、分厚い中間層によって支えられる安定した社会の再構築を実現する決意だ」
TPP参加は貿易立国、投資立国としての日本が発展していくための方法であることを強調。
「このような観点から関係各国との協議を開始し、各国が我が国に求めるものについてさらなる情報収集に努め、充分な国民的な議論を経たうえで、あくまで国益の視点に立ってTPPの結論を見ていくこととしたい」と、述べた。