兄貴分の『X5』が巨大になった。そこで、初代X5とほぼ同じ大きさ、(日本における)ほどよい“ビッグサイズ”をもって生まれ変わったのが、新型『X3』である。
旧型の、細身でちょっと頼りない感じ、もしくはファッショナブルとはいえないクロカン風味、がほとんど失せた。逆にいうと、コンパクトゆえの扱いやすさなど、失ったものも多いかも知れない。そう思った人は“『X1』をどうぞ”ということだろうか。X1では物足りないと思うのだが……。
それはともかく、乗用車として評価するならば、サイズアップだけのせいではないにせよ、得たものの方が大きかった。安定感ある上質なライドフィールなどは、その最たるもの。初代X5において、クロスオーバーSUVの乗り味に、”革命”を起こしたBMWにとって、これくらいの進化など朝飯前だったということだ。
2グレードが日本市場に投入された。ためらうことなく下の「xDrive28i」をオススメする。それはもう、上級グレードの存在理由が“最初の五歩だけ速い”と思うこと以外、ほとんど見当たらないくらいに。
ライバルと目される、アウディ『Q5』やメルセデスベンツ『GLKクラス』と比べても、全ての面にわたって、“新しいだけのことはある”クルマに仕上がっている。この3台のなかでは、もちろん、完成度でイチオシ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。