福島原発の事故をきっかけに、電源車の役割がクローズアップされている。第一原発で全電源喪失という事態が起きた時も、仮設ポンプを動かしたのは電源車だった。電源車とはいったい何なのか。
電力会社への納車でシェア約70%を占めるのは1897年創業の「明電舎」(品川区・稲村純三社長)だ。エネルギーシステム事業部の小倉弘行課長に聞いた。「発電機装置がトラックなどに乗って、どこでも運べるようにしているのが移動電源車です」。
電源車のアルミパネルの荷室の中には、発電機を回すためのエンジンと発電機を積んでいる。また、荷室後方には電源を施設に繋ぎ込むため20mほどのケーブルなどが収納されている。
工事現場などで発電装置だけをトラックの荷台に載せたタイプは、一般でも見かけることがあるが、これは可搬式の電源装置を載せただけで電源車とは区別される。
ディーゼル発電タイプは、走行用と発電用で燃料を共有するため、通常より大容量の燃料タンクに取り替えられている。8時間から10時間は連続で運転が可能だ。
電源車は、車両と組み合わせてより機動性を重視した作りに仕上げられている。
ディーゼルエンジンのかわりにガスタービンエンジンを搭載した電源車もある。ガスタービンエンジンの特徴は、ディーゼルエンジンより重量が軽くできる。「ディーゼルエンジンでは最大で3000kWの高速機があるが、これだと重すぎてトラックに載せられない。非常用ガスタービンエンジンは5000kWまである」(小倉氏)。
「あとは要請に合わせてうまく車両に載せることができればいい。当社では2500kVA(キロ・ボルトアンペア)の実績がある」(小倉氏)。同社では発電機の出力によって、4tから20t車のラインナップが揃っているという。価格は発電容量に応じて1台数千万円から。低圧では75kVA、高圧では400kVAから500kVAが中心になっている。