【スバルの先進安全技術 試乗レポート】“いいことずくめ”で普及に期待…森口将之

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全車速追従機能付クルーズコントロール
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  • 新型アイサイトのステレオカメラ
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  • スバル新型 EyeSight(アイサイト) の全車速追従機能付クルーズコントロール

第2世代となる新型『EyeSight(アイサイト)』の事前試乗会がスバルのテストコースで行われた。

ステレオカメラのみで前方走行車との距離を認識

スバル アイサイト最大の特徴は、ミリ波やレーザーなどのセンサーの代わりに、ステレオカメラによる画像認識をおこなっていること。視野角25度の左右カメラを組み合わせ、秒間30コマで切り取られた左右の画像の“ズレ”によって、映った物体までの距離を計測する。

4月に発表された第2世代の新型アイサイトでは、自車との速度差が30km/hまでの間で追突事故を回避・軽減できる「プリクラッシュブレーキ」や、停止制御までを可能にした「全車速追従機能付クルーズコントロール」、そして「AT誤発進抑制制御」などの機能を新たに搭載した。今回これらの新機能を中心に試すことができたのでレポートしよう。

◆完全停止まで制御…「全車速追従機能付クルーズコントロール」

まず外周路を使った「全車速追従機能付クルーズコントロール」の体感からスタートした。

クルーズコントロール関連のスイッチは、従来型の「SIクルーズ」と同じくステアリングの右側スポークにある。車間距離は3段階、速度設定は40 - 100km/hの範囲で可能だ。最初は40km/hでテストする。先行車のエクシーガに続いて発進、直後に+/-スイッチでセットを選択し、アクセルから足を離す。すると車間を調節しながら40km/hまで加速していく。このあたりの制御はミリ波やレーザーなど電波型のACC(アダプティブクルーズコントロール)と同様だ。

先行車が減速すると、一瞬ブレーキに足を乗せたくなるが、直後にアイサイトが減速してくれる。先行車が停止すると、ブレーキを踏まずとも試乗車も止まり、インジケーターが点滅に変わった。これまでのACCは運転者の感覚からワンテンポ遅れて動作する感覚があったが、新型アイサイトではほとんど違和感なく停止まで速度をコントロールしてくれる。減速から停止までのマナーがあまりにスムーズなことに驚かされた。

再発進にはリジュームスイッチを押すか、アクセルを軽く踏む必要がある。操作を忘れると数秒後にピッと短いブザーで教えてくれる。“動きだし”はあくまでもドライバーの意志。“自動運転”ではなく“運転支援”であるというアイサイトの思想の現れだ。

◆SIドライブのセレクトでクルコンの制御も変化

設定速度を40km/hから一気に80km/hに上げてみても加速は滑らか。もちろん高速道路の長距離渋滞のシーンでありがちなノロノロ運転でも対応してくれる。SIドライブをIからSモードにすると、エンジン回転数が上がり、加速の反応がよくなる。S#はレスポンスこそほぼ同じだが、回転数はさらに上昇した。

また、自車と前車の間に他車が急に割り込んだ場合でも試乗車は迅速かつ確実に速度を落とし、所定の車間をキープしてくれた。

今度は逆に、自車が先行車の直後に急に割り込んでみる。すると、ステアリングを切るまでは定速を維持しつつ、進路を変えた途端に必要な減速をなめらかにこなし、同じ車間に戻してくれた。速度管理だけでなく前方車認識の反応や車線管理も一級であることを思い知らされた。試乗を通して結局ペダルを踏んだのは発進の瞬間だけだった。

◆車速30km/hなら追突回避可能…「プリクラッシュブレーキ」

続いて「プリクラッシュブレーキ」の試乗。30km/hでレガシィの形をしたバルーンに突っ込むというメニューが行われた。

ゆっくり加速して30km/hまでスピードを上げ、アクセルを離す。バルーンが迫り、ピピピッという警告音が鳴り続ける。ブレーキに足を乗せようかと思った刹那、ググッという音とともに強いブレーキが掛かり、寸前で止まった。

「ぶつからないプリクラッシュブレーキ」は、過去にボルボ『XC60』の「シティセーフティ」で体験している。しかしあちらで衝突を回避できるのは15km/h以下であり、30km/hでのテストは体感的には2倍以上の速度に感じた。それだけに結果に圧倒されたというのが正直な気持ちだった。

あっけにとられていたら、クルマがするする動き出したので慌ててブレーキを踏んだ。停止後3秒以内に再発進することが、国交省の指針に定められているからだ。

その後もいろいろな速度で試したが、20km/h以下の低速で挑戦しても、40km/hでも衝突しなかった。「4名乗車で30km/h以内なら衝突を回避できる」設計になっているので、エンジニアとの2名乗車では回避速度域が広くなるのだという。

車速を45km/hまで上げると、さすがに接触する場合もあるが、しかし「衝突した」というより、「触れた」というレベルだった。ここにもアイサイトの価値がある。100km/h以下で同様の状況に遭遇すれば、30km/h分の減速をしてくれる。それだけ衝撃を弱めてくれるのである。

◆ベタ踏みでもトルク抑制…「AT誤発進抑制制御」

さらに新型アイサイトの新機能のひとつ、「AT誤発進抑制制御」もテストできた。前方に車両や壁などがある状態で、ドライバーが必要以上にアクセルを踏んだとき、それを検知してスロットルを閉じる、というもの。試乗車は前輪が輪留めで止まっていたので、軽く踏んだぐらいでは乗り越えない。深く踏み込んでも、2000rpmあたりで回転が頭打ちになる。

誤発進防止については、ブレーキオーバーライドシステムが対策になるという意見が一般的だ。しかしブレーキオーバーライドは、アクセルとブレーキを同時に踏まなければ作動しない。誤発進でパニック状態のドライバーが、冷静にもうひとつのペダルに足を掛けるとは考えにくい。スバルのAT誤発進抑制制御のほうが、はるかに効果があるように思えた。

◆燃費向上にも効果 低価格化で普及に期待

新型アイサイトを試乗してみて、「未来のクルマを実感した」といっても過言ではない。「全車速追従機能付クルーズコントロール」での発進停止を含めたすべての動きをスムーズにやってのける点には感動さえ覚えた。しかも無駄なアクセル操作がなくなるので、燃費は最大で10%ぐらい向上するという。まさに、いいことずくめだ。

さらに新型アイサイトはデザインが洗練された。旧型はルームミラーの視界を一部さえぎるほど大きく無骨だったが、今回は周辺の造形と巧妙に一体化している。これだけの機能を持ちながら、システム価格は従来型の約20万円から約10万円に下げられた。新型アイサイトはこれまでと異なりすべてのボディ、エンジンで選択可能とのこと(ただしMT車には装着不可)。売れ筋の2.5リットルのNAモデルにも低価格で搭載できるため、従来とは比較にならないほど装着率が高まるのではないだろうか。

《森口将之》

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