昨年6月、神奈川県横浜市西区内の市道を横断中の2歳女児をひき逃げし、死亡させたとして、自動車運転過失致死と道路交通法違反の罪に問われた78歳の男に対する判決公判が13日、横浜地裁で開かれた。裁判所は懲役2年6か月の実刑を命じている。
起訴状によると、問題の事故は2009年6月30日午前に発生している。横浜市西区戸部本町(N35.27.12.1/E139.37.26.2)付近の市道を母親と一緒に横断していた2歳の女児が、交差点を右折進行してきた乗用車にはねられた。
女児は頭部を強打して死亡。クルマはそのまま逃走したことから、警察では死亡ひき逃げ事件として捜査を開始。後に77歳(当時)の男をひき逃げ容疑で逮捕している。検察もひき逃げなどの罪で起訴したが、男の弁護側は「アルツハイマー型認知症に罹患しており、事故を起こした認識がなかった」などと主張。ひき逃げには当たらないとしていた。
13日に開かれた判決公判で、横浜地裁の久我泰博裁判長は「女児との衝突時に被告が振動や衝撃を感じていたと推認される」と指摘したが、一方で被告がアルツハイマー症状にあることは認め、「症状によって認識力や知覚力が低下していた可能性は否定できず、衝撃を感知していたとしても“人に傷害を与えた”と認識できたかどうかには疑いがある」とした。
しかし、被告が事故後に逃走したり、容疑車両を隠したりした経緯からは「被告が“事故を起こしていない”という認識だとすればこのような行為は不自然である」とも指摘。
「傷害の程度は認識できないながらも、被告に“事故を起こした”という認識自体はあった」と認定し、「一人娘を事故で突然失った両親の悲しみは察するにあまりある」として、被告に対して懲役2年6か月の実刑判決を言い渡している。