「花屋さんやパン屋さんが、このクルマに乗っていたら可愛いよね」と、どうも自家用車としての現実味がうすい。フルモデルチェンジしてひとまわり大きくなり「これなら大量のパンが展示販売できる」と、喜んでいる場合でもあるまいに。
運転席に座れば、目に入るのはセンターコンソールの壁に落書きのように書いてあるシフト操作の表示。屋根は高く、小物入れが設けてあるのはいいけれど、奥行きが深すぎて物を入れて一度ブレーキをかけたら、二度と手が届かなくなりそうなあたり、いかにもフランス的気配りのなさ。
エンジンは非力だし、インテリアはがさつだし。だけど、10分乗っているだけでなんでこんなに愛着がわいちゃうの? ふんわりふにゅっと沈み込むサスが、最近、固くなりがちなフランス車への反抗精神たっぷりで。そうだ、これでこそラテンな車だと、応援旗をふりまわしたくなる。やっぱりラテンって、オリコウよりも、自分勝手な奔放さが魅力なわけだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト
1962年横浜市出身。いま一番購買力があるとされるアラフィー世代を代弁する軽妙な論調に定評あり。交通安全啓蒙に力を注ぐほか、子供たちに命の大切さを伝えるノンフィクション作家としても活動。近著に『ハチ公物語 - 待ちつづけた犬 -』(講談社青い鳥文庫)。