レンタカー会社が、慎重過ぎるほどの本人確認を求める背景には何があるのか。地方のレンタカー協会をとりまとめる「社団法人全国レンタカー協会」(井山嗣夫会長)の担当者は、言葉を選びながらこう言う。
「返却予定の時間を過ぎても返さずに乗り回す不返還車の存在も、ひとつの原因だと思います」
不返還車とは、レンタカーとともに借り手が行方不明になる、あるいは、店頭などに乗り捨てられ、精算されないまま借り手に連絡がつかない車両のことをいう。
「全国にレンタカーは約37万台ありますが、その内の数百台は不返還の被害にあっていると考えられます」(前同)
こうした不返還車は、犯罪などに使われるケースがないわけではない。レンタカー会社は被害を未然に防ぐと同時に、犯罪を助長しないための社会的責任も負わなければならない。
最初に借り手の審査を強化について、先鞭を付けたのはトヨタレンタリースだった。2年前のことだ。精算をクレジットカード利用に絞ることで、不返還車率が減少した。レンタカー業界全体は前年比数その効果を見極めるような形で、大手レンタカー会社では横並びでクレジットカードによる精算を原則とするようになった。
「レンタカー業界全体は、前年比102から103%程度で成長していますが、不返還車率は横ばいで抑えることができているのは対策の成果かもしれません」(前同)
しかし、借り手にとっては窓口に来て、初めて貸し出しできないことを知りトラブルになるケースもある。レンタカー各社が、行楽や引越で年に数回しか借りない顧客にも、こうしたレンタカー会社の対応の変化を伝える努力を続けることは必要だ。