【伊東大厚のトラフィック計量学】旅客輸送量の国際比較

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乗用車依存度の高い欧米

近年、日本の旅客輸送量が鉄道など公共交通にシフトする兆しがあり、大都市圏では乗用車の利用が頭打ちになってきた。国際的に比較すると、交通手段別の旅客輸送はどうなっているのだろうか。

図1は、乗用車、バス、鉄道の旅客輸送量(人・km、旅客の国内総移動距離)を国際比較してみたものだ。各国とも輸送量は伸びているが、日本は鉄道輸送量の割合が突出して高い点がまず目を引く。これは、鉄道網の発達している大都市圏に人口が集中していることや長距離でも新幹線などの利用率が高いことが要因だろう。

バスと鉄道の利用分担率は、ヨーロッパ主要国が10%ちょっと、アメリカは数%に過ぎないのに対し日本は3割以上であり、日本より欧米は乗用車の依存度が高いと言える。

◆一人あたりの移動距離

輸送量を人口で割ると、国民一人あたりの年間移動距離がわかる(図2)。通勤や出張、旅行など移動の目的は様々だが、日本は乗用車で6500km、鉄道で3000km、合計1万km程度だ。図1のように何10億人・kmと言われてもピンと来ないが、ひとり1万kmなら実感がわく数字だろう。

移動距離の合計は、ヨーロッパ主要国が日本の1.2 - 1.5倍、アメリカは2.5倍にも達する。また自動車の移動に着目すると、ヨーロッパ主要国が日本の約2倍、アメリカは4倍近くにもなる。

この数字から乗用車の年間走行距離を類推すると、1台あたり平均1.5人乗るとして日本が1万km弱、ヨーロッパ主要国で1.5万 - 1.8万km、アメリカは3.7万km(!)走っている計算になる。島と大陸など違いはあるにせよ、日本は乗用車があまり使われていない。

◆一人あたりの旅客CO2排出量

公共交通の利用水準は運輸旅客部門のCO2排出量に影響する。我が国の運輸旅客部門のCO2排出量は、国民一人あたりに換算すると1.2トンくらいの水準であり、05年度は98年の水準まで減少してきた(図3)。

公共交通の利用水準の違いから、欧米の一人あたりの旅客CO2排出量は日本より高い値になるだろう。この指標は、公共交通利用率や燃費効率に加え移動距離(活動量)も反映されるため、比較する上で有効な総合評価指標となる。

《伊東大厚》

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