【伊東大厚のトラフィック計量学】道路交通はどこまで安全になるか? その1…1人15万円の損失

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減少しはじめた交通事故死者数

5月11日から20日の春の全国交通安全運動期間中、道路上で起きた交通事故による死者数は139人であった。1955年以降では最も少ないそうだ。

日本の交通事故者数は、昨年6352人と51年ぶりに6000人台前半となるなど、2001年から6年連続で減少しており、今年も5月20日現在、昨年同期より208人減の2074人と減少傾向が続いている。

発生件数や負傷者数も、2005年から、ようやく減少に転じた。しかし、発生件数は90万件以上、負傷者数は100万人以上(いずれも2006年)と、依然、多くの交通事故が発生していることには変わりはない。日本の道路は安全か、との問いには、残念ながら“NO”と言わざるを得ない。(図1)

◆交通事故 いくつかの観点

国際比較の観点で、日本の交通事故死者数は多いのだろうか。

国の規模が異なるため、人口10万人あたりの交通事故死者数を比較してみよう。この指標は、死亡事故に遭遇するリスクを示しているが、日本は、6.7人であり、主要国中、第5位にある。相対的に見て、日本の道路交通は安全なほうであると言ってよい。(図2)

死亡原因別の観点では、どうなのだろう。

日本の死者数は年間約100万人である。そのうち交通事故による死者は7000弱であるから、上位にランキングされるわけではない。がんや心臓病など「3大成人病」のほうが、はるかに多い。

しかし世界に目を転じると、交通事故死者数は世界で約120万人と推定されており、死亡原因の9−10位にランクされている。また将来、戦争やHIVを上回り、第3位になるとの予測もある。(表1)

経済的な観点では、どうか。

交通事故による国民全体の経済損失額は、年あたり6兆7500億円と試算されている(2004年度値)。これは、GDP(国内総生産)の1.4%に相当する額だ。さらに、約12兆円とされる渋滞損失を加えると、損失額は、19兆円近くにのぼる。この道路交通の2大損失は、国民一人あたり約15万円となり、とても大きな損失を蒙っていることがわかる。

◆政府の交通安全対策の目標は?

日本は、2003年正月の首相談話「世界一安全な道路交通の実現を目指す」をきっかけとして、2010年までに交通事故死者数5500人以下、負傷者数100万人以下という目標を掲げている。他の国々も、こうした目標を掲げている国は少なくない。

次回以降、近年の交通事故の特徴や対策などを俯瞰しながら、目標達成の見通しについて考察したい。

《伊東大厚》

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