オービスの正確性が争点の公判、最高裁が高裁へ差し戻し

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秋田県潟上市の県道で速度違反を行ったとして、道路交通法違反容疑の罪に問われた男の上告審判決公判が23日、最高裁第1小法廷で行われた。

オービス(速度違反自動取締機)の正確性が事実上の争点となっていたが、裁判所は正確性に疑問を呈した二審の仙台高裁判決を破棄。同高裁に差し戻した。

問題の事件は2004年8月16日の午後3時ごろに発生している。潟上市天王字天王付近の制限速度60km/hとなっている県道(現:国道101号バイパス)で、40歳の男性が運転する乗用車が92km/hで走行したとして、オービスによる取り締まりを受けた。

男性は警察への出頭も拒否したために2005年1月に道交法違反で逮捕されたが、この際には容疑を認め、一審の秋田簡裁からは罰金6万円の判決を命じられていた。

しかし、一審判決の後に「オービスが設置されているのは知っており、80km/h程度の速度で走行していたかもしれないが、92km/hは出していない」、「逮捕され、身体的拘束を受けたことを苦痛に感じて容疑を認めてしまった」として控訴。以後、被告は「オービスの測定値がプラス側になった可能性がある」として、測定誤差を主張していた。

これに対して検察側は「測定値にマイナス誤差はあっても、プラス誤差は生じない仕様になっている」と反論したが、二審の仙台高裁は「測定値にマイナス誤差が生じないことを裏付ける客観的なデータが存在しない」として、製造メーカーの資料を証拠とする検察側を暗に批判。「測定値が正確であるとは言えない」と指摘し、公訴棄却の決定をしていた。

検察はこれを不服として上告。速度違反の事実より、オービスの正確性が争われるという展開になっていた。

23日の上告審判決公判で、最高裁第1小法廷の涌井紀夫裁判長は、二審の仙台高裁が検察官の立証不十分を指摘していたことに触れ、「検察側の立証が不十分であると判断するのであれば、プラス誤差が生じないことを客観的に裏付けるための資料提出や立証を検察に促すなど、さらに審理を尽くした上で判断を行うべきだった」と指摘。「オービスの正確さは一審で一応は立証されている。二審では必要な審理を尽くさず、事実を誤認した疑いがある」として公訴棄却の決定を破棄。審理を同高裁に差し戻した。

オービスの正確性を争う公判では、「マイナス誤差が生じない」という証拠に製造メーカーが作成した資料が使われたり、メーカー社員が正確性を証明するための証人に立つなど、その客観性に疑問を持つような展開が多々見られる。今回の公判でも検察側主張の根幹部分はメーカーが作成した資料を用い、誤差についての証言も社員が行っている。

仙台高裁の判断はメーカー主導で行われる公判に苦言を呈したものともいえるが、最高裁は「出せない、出てこない客観的資料」を求めたものともいえ、今後の展開が注目される。

《石田真一》

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