マイクロソフト『Windows Automotive 5.0』は、ナビメーカーにとって魅力的な開発ツールがOS本体と一緒に提供されることもトピックのひとつだ。
カーナビのハードウェアのシステムリソース配分の最適化を目指すツールであるAST(Automotive System Tools)もそのひとつ。
当然と言えば当然なのだが、カーナビはハードウェアとして完成した形(すべてのハードウェアがパッケージングされた状態)でメーカーから販売される。
今のカーナビの外観デザインは各社に差異が生じているものの、CPUやメモリ周りなどのハードウェア構成についてはワンメイクに近い。パーツの供給ベンダーが限られているためで、ハードウェア自体に性能差はほとんどないと言ってもいい。
では、どういうところで差異を生じさせているかと言えば、それはアプリケーションなどのソフトウェア部分。各社のカラーはここで決まり、様々なアプリケーションをどう使うかでナビ自体の性能評価も決まってくる。
今のカーナビは地図表示だけではなく、CDからのリッピングであるとか、DVD動画再生などにも対応しなくてはならない。
アプリケーションの搭載数もこれによって増えているが、カーナビなどの組み込み機器はパソコンと違い、ハードウェアリソースが足らなくなったからといっても簡単に増強できない。
だから上限が決められたリソースをどう配分し、どのように使うかが重要となってくる。
Windows Automotive 5.0で提供されるASTは、CPUやメモリの作動時間や使用量を測定し、複数のアプリケーションを動作したときのリソースを最適配分できるように促す。
カンファレンス当日のデモンストレーションでは、3D地図描写と動画の再生中にアニメーションの動きを重ねるというものだった。
3D描画は全体に占めるCPUの空き時間を使って動作させていたため、アニメーションが加わるとこれが奪われて演算による周期が長くなり、動作が一瞬止まったように見えてしまう。
そこでASTを使って診断。アニメーション動作のリソースをCPU演算のリアルタイム性が少ない動画再生の方へ振り分けることによって、複数起動が行われたとしても、それぞれがスムーズに動かせるようにする。
ASTはリソース部分での問題点を開発段階で抽出。開発者にリソース配分の最適化を促すものであり、製品に搭載された状態でハードウェアのリソース配分を動的に最適化するものではない。あくまでも開発を手助けするというレベルに留まる。
リソース配分の自動化ツールについては、Windows Automotiveを担当するマイクロソフト・プロダクトディベロップメント・リミテッド、ITS戦略統括部の平野元幹氏自身がこれを「魔法のツール」と称すほどで、同時に「まだ存在しない」とも明言している。