マイクロソフト『Windows Automotive 5.0』は、同社製品の中では珍しく日本主導で開発されたOSだ。そのキーマンとなるのが同社プロダクトディベロップメント・リミテッド、ITS戦略統括部の平野元幹氏だ。
カーナビ、特に純正OEMの分野では車種ごとにナビを変えることが要求される。100万円のクルマと、1000万円のクルマが同じナビでは許されないからだ。
特に後者の顧客はクルマの価値というものを重視する傾向にあり、インテリアデザインへの調和も考慮すれば、安っぽい外観は似合わない。モニターの大型化傾向が続いており、センターコンソールに占めるモニターの割合が大きくなっているからこそ、見栄えが重要となる。
平野氏は「Windows Automotive 5.0と一緒に提供される様々なツールを使うことで、HMIのみを変更することが可能であり、多機種の同時開発に対応する」と説明。
Windows Automotive 5.0は同一のハードウェアであったとしても、HMIの表示内容や、操作を行ったときのフィーリングを容易に変えることができる。しかも、これらは機能の操作系とは完全に切り離されているため、HMIの外観のみを変えればいい。
極端な例だが、100万円のクルマと1000万円のクルマが同じハードウェアのシステムを搭載していたとしても、HMIの見栄えや操作感覚を調整することで、ユーザー側には違うシステムが搭載されているように装えるというわけだ。
また、従来のμITRONの場合、HMIが操作系や機能に結びついているため、表示される画面ごとに開発を進めていく必要があった。システム全体に占めるHMIの容量は10%程度であるにも関わらず、全体の工程数の50-60%を占めるなど、開発を進める上でのネックになっていた。
Windows Automotive 5.0を採用することで、HMIに関する工程数は確実に減らせることが出来るとともに、HMIの変更だけでローエンドからミッドレンジ、ハイエンドまで対応できるため、開発リソース自体を有効活用できるようになる。