愛知県長久手町のトヨタ博物館南側に建てられた、トヨタの夢の住宅PAPI(パピ)は、壁面が色素増感型太陽電池になっている。これは植物の光合成の原理を模倣したもので、酸化チタンの微粒子に色素をつけ、これに光が当たると電子が放出されるというもの。
材料や製造装置も安価で、製造時のエネルギーも少なくてすむという。アイシン精機の技術だ。
また自動車用として開発が進む燃料電池は、PAPIにも定置燃料電池として置かれ、都市ガスやプロパンガスを原料として発電を受け持つ。発電時に発生する熱は水を温めることに使われ、プールの温水化も可能だ。電気が余った場合は売買電されるという。
燃料電池の横には液晶のエネルギーモニターが備え付けられ、現在の電気の状況が一目で分かるようになっている。この画面はどこかで見たようなもの。そう、ハイブリッドカー『プリウス』の発電状況表示ディスプレイに通じるものだ。
そして最もユニークなのはプリウスの発電能力を家へ活かしたこと。想定されているのは災害でのライフラインダウン時で、ガレージに置いたプリウスは設置されたE-ステーションに接続され、PAPIへ電力を供給する。
最大3000Wの電力を36時間以上供給でき、さらにそれ以上停電が続く場合でも、ガソリンスタンドまで走れて給油できればずっと電気が使える。これはすぐにでも実現できそうな仕組み。プリウスの付加価値がさらに高まったわけだ。
災害時といえば、PAPIにある暖炉は実際に火を焚くことができ、プールの水も生活用水(特にトイレ用)として使うことが想定されている。娯楽のための施設にサバイバルのための設備が変身するのだ。
PAPIで示された技術がそのままパッケージ商品化されることはないようだが、個々の技術はトヨタホームに活かされていくという。PAPIの開発には28のトヨタ関連会社が参加しているが、開発の終了した開発チームは商品化チームへと代えられ、今後商品化を進める。