証拠は証言しかない…ひき逃げ容疑者に無罪判決

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忘年会帰りに飲酒運転を行い、駐車場で酔い潰れていた同僚をクルマではねて死亡させたとして、業務上過失致死と道路交通法違反(飲酒運転)の罪に問われた30歳の男性に対する判決公判が18日、横浜地裁で開かれた。

裁判所は被告の男性に無罪を言い渡している。

問題の事故は1998年12月31日未明に発生している。同日の午前0時30分ごろ、神奈川県横浜市港北区内の市道で、当時32歳の男性が倒れているのを通行人が発見。警察に届け出た。男性は病院に収容されたが、内臓破裂などが原因で死亡している。

警察では死亡ひき逃げ事件と断定。現場に隣接する駐車場には被害者の所有するクルマが置かれており、現場の状況からこの男性は駐車場の出口付近で酔い潰れて倒れていたところを、同じ駐車場から発進したクルマに引きずられ、死亡した可能性が高まった。

被害者同僚の供述により、12月30日深夜にこの駐車場へ被害者を含む3人を送り届けたことが判明。さらには被害者以外の2人が乗ったクルマの底部に血痕が残っていることが確認された。

警察では業務上過失致死と道交法違反容疑でこの2人から事情聴取を行ったが、クルマを所有者する男性は「自分は泥酔していて車内で寝ていたので当時の事情は全くわからない」と供述した。

これに対して同乗していたという男性は「駐車場の中で振動を感じた。途中で危険を感じ、運転を交替して自宅まで送り届けた」と証言。所有者の男性が泥酔状態でひき逃げ事故を起こしたと示唆した。

これを受け、警察は1999年2月にこの男性を業務上過失致死容疑などで送検したが、取り調べの過程で男性は強固に運転の事実を否定。検察は2000年1月に男性を嫌疑不十分を理由に不起訴処分とした。

だが、並行して行われた損害賠償を求める民事訴訟では「男性が運転していた」と認定され、損害賠償の支払い義務があるという判決が下った。

このために遺族側は最初の不起訴判断を不服として横浜検察審査会に不起訴不当を申し立て、これが認められる形で横浜地検の再捜査が行われ、男性は再び同じ罪状で起訴されていた。

18日に行われた判決公判で、横浜地裁の広瀬健二裁判長は、被告の「自分は泥酔状態で酔い潰れており、後部座席で寝ていた」とする被告側の主張を容認。検察が主張していた同僚との運転交代については「同僚の供述内容が不自然に変遷しており、運転を交代したとする供述の信用性には疑問がある」と指摘した。

その上で裁判長は「運転を交代したという主張のみが柱となっており、これは被告の有罪をただちに導くものと言えない。被告が運転をしていたという合理的な証拠もない」として最終的に認定し、被告男性に無罪を言い渡している。

《石田真一》

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