交通事故によって死亡した当時67歳の男性に掛けられていた保険金約2億4000万円の支払いを保険会社5社が拒んだことで、遺族が支払いを求めて起こしていた民事訴訟の判決が6日、福岡地裁で行われた。裁判所は保険会社に総額約1億8500万円の支払いを命じた。
この民事訴訟は1999年当時、福岡県太宰府市で中古車販売会社を経営していた男性の遺族が起こしたもの。
この男性は1999年10月、大分県日田市内の国道386号線で軽乗用車を運転中に道路沿いの夜明ダムにクルマごと転落。溺死しているのが発見された。
遺族はこの男性が契約していた保険会社5社に対し、総額約2億4000万円の支払いを求めたが、保険会社側は「個人であるのに12社と21件の保険契約を締結しているのはおかしい」といった理由や、この男性が死亡する5年ほど前から交通事故を何度も起こし、その度に保険金を受け取っていることから「自身が経営する会社も倒産寸前で、保険金目的の自殺だった可能性が高い」として支払いを拒否。遺族はこれに反発し、支払いを求めて提訴していた。
6日に行われた判決で、福岡地裁の大西忠重裁判官は「男性が自殺を決意するほど会社の財務状況は当時悪化していたとは言えず、自殺に至るような事情はない。したがって自殺を考えていたとは思えない」と、保険会社の自殺説を一蹴した。
さらには「個人の立場としてはたしかに契約数が多いものの、男性の経営する会社は保険代理店も兼ねており、付き合いで契約したものもあった。過去に多額の保険金を受け取っていたのもこうした経緯があるからで故意とは思えない」と、契約に不自然さは見受けられないと認定した。
事故自体についても「状況から偶発的に発生した事故で、警察の検分でも自殺を伺わせるようなものはなかった」として、保険金の支払い義務は生じると最終的に認定。保険会社5社に対して総額約1億8500万円の支払いを命じた。
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