バス運転手の死は過重労働が原因---奈良交通に処分

自動車 社会 社会

国土交通省・近畿運輸局は1日、奈良交通に対して路線バス4台を5日間の運行停止にするという行政処分を科したことを明らかにした。

昨年10月に当時56歳の運転手が乗務中に車内で死亡するという事故があり、これを発端に行った監査で規定を超えた乗務の実態が発覚した。

同局によると、路線バスの運転手が乗務中に死亡するという事故は昨年10月31日に発生している。近鉄奈良駅前を出発し、杏南町に向かっていた奈良交通の路線バス(79人乗り)が同日の午後1時3分ごろ、奈良市西九条町にある終点のバス停に到着した直後、運転手がハンドルに突っ伏すように倒れた。

クラクションが鳴りっ放しだったことを不審に思った近くの商店主がこれを発見。運転手は近くの病院に救急搬送されたが、解離性大動脈りゅう破裂による大出血が原因で死亡した。

この運転手は同日の午前6時ごろから乗務を開始し、午後7時30分すぎまで乗務する予定だったが、遺族から「過重労働が原因かもしれない。会社が過労運転防止を実施していたかとなどを厳正に調査し、業務改善命令など実効ある措置をしてほしい」との要望書が同局に提出された。

同局でも「乗務中のバス運転手が死亡するというケースは稀有。走行中だった場合には二次被害を起こす可能性も高い」として、奈良交通への特別監査を実施した。

同社は監査の際に「今回の発症は医学上予測できない突発的な不慮の疾病だった」という医師の見解を伝え、過労運転は「ない」としていた。

しかし監査の結果、死亡した運転手を含め、道路運送法に基く旅客自動車運送事業運輸規則で定められた勤務時間をオーバーしていることが確認された。実際の乗務時間についても規定を超過しており、これが過労要因になっていると最終的に認定した。

このため、同局では旅客自動車運送事業運輸規則に違反したことを理由として、奈良交通に対し、路線バス車両4台を5日間の運行停止とする行政処分を1日に命じた。

《石田真一》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集