警察官の証言は正しいのか---秋田の発砲事件

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検問を突破した盗難車に対し、同僚が危害を受けたと勘違いした警察官が威嚇や予告なしに発砲した事件について、秋田県警は26日、この際に発射された銃弾が容疑車両の窓ガラスを貫通し、検問の手前で停止していた他車に当たっていたことを明らかにした。

このクルマの所有者が警察に届け出たために発覚した。能代署の署長は25日夜までにこの所有者に陳謝している。

この事件は23日午後に起きている。秋田県能代市内で手配中の盗難車を発見するための検問を実施していた同署の警察官2人が、検問の手前で私有地に逃げ込もうとするクルマを発見した。

クルマはその場でUターンして脱出を図ろうとしたが、後を追いかけていた警察官がクルマの後部付近で前のめりに転倒。同僚が危害を受けたと勘違いした警察官がクルマに向け、予告や威嚇無しで拳銃を発砲した。

犯人は混乱に乗じてそのまま逃走したが、数時間後に発見されている。

24日の午後、青森県弘前市に住む男性が自分の所有する軽ワゴン車の洗車を行っていたところ、運転席側ドアの下部にあるステップが約9cmに渡って陥没し、一部が裂けていることを発見した。

この男性は事件発生当時、現場となった検問の手前で停車。警察官が発砲する様子を至近距離で眺めていた。クルマをどこかにぶつけたという記憶が無いことから、所有者の男性は前夜に起きた発砲事件に関連があると判断。青森県警・弘前署に対して「銃弾が当たったとしか思えない」と届け出た。

青森県警では車両検分を行ったが、クルマに生じた傷は拳銃の弾が当たったものと最終的に判断し、秋田県警にその旨を連絡した。これを受け、秋田県警では25日夜までにクルマの所有者に陳謝している。

秋田県警でも車両に生じた傷が銃弾によるものだと認めたが、その場合には発砲した警察官の証言と矛盾が生じてしまうのも事実だ。

発砲した警察官は当初「国道へバックで戻ろうとするクルマに対し、車体の左後方から発砲した。この際、自分も国道に背を向ける形だった」と証言している。

だが、容疑車両を貫通した銃弾が左後方から右前方に突き抜け、対向車線側で停止するクルマの右側面に当たるとしたなら、警官は国道上で発砲を行わなければ、物証通りの軌跡を銃弾が描くこともない。

この場合、発砲した警官は右車線に一般車両が停止していることを承知の上で左後方から右前方に向けて発射したということにもなりうる。一般車両を巻き込む可能性が非常に高かったというわけだ。

秋田県警では「発砲は同僚警官の身を案じたもので、正当だったと考える」とコメントしているが、今回見つかった物証はその正当性に疑惑を投げかけることになりそうだ。

《石田真一》

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