幼稚園バスの暴走はクリープ現象

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携帯電話の着信音に気を取られ、前方を歩いていた4歳の女児を幼稚園の送迎バスと自動販売機の間に挟み死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた29歳の元教諭に対する判決公判が16日、横浜地裁横須賀支部で行われた。裁判官は執行猶予付きの有罪判決を言い渡している。

この事故は昨年9月12日の午前8時ごろ、神奈川県横須賀市で発生している。私立幼稚園の送迎バスを運転していた男性教諭が携帯電話の着信音に気を取られてブレーキペダルから足を離し、幼稚園の正門に向かうためにバスの正面を歩いていた女児をはねたというもの。女児は突然動き出したバスと自動販売機の間に挟まれる状態となり、多臓器不全などが原因で事故から3時間後に死亡した。

自動販売機が“くの字”に変形していることから、事故当時に教諭がパニック状態となり、アクセルを踏み込んだ可能性も高いとして、警察ではこの教諭を業務上過失傷害で現行犯逮捕し、後に容疑を業務上過失致死に切り替えている。教諭は取り調べに対して掛かってきた携帯電話に出ようとした際、クルマが前に微動したのでブレーキを踏もうとした」と供述したが、当初踏んでいたことを認めていたアクセルについては「踏むアクションが違うため、踏んでいたならすぐに気がつくと思う」と供述内容を訂正。アクセルは踏んでいないと主張していた。

16日の判決公判で、横浜地裁横須賀支部の福島節男裁判官は「Dレンジに入れたまま、サイドブレーキを引かずにクルマを駐車させていた部分は被告の明らかな過失である」と認定した。しかし、アクセルを踏み込んだことについては被告側の主張を受け入れ、「アクセル操作は行っていない」と判断。クルマが前進した理由については「オートマチック車特有のクリープ現象によるものだった」と断定した。

裁判所は駐車場に暴走を防ぐ車止めが設置されていなかったことや、被告が事故をきっかけに退職を強いられており、一定の社会的制裁はすでに受けていると認め、禁固2年6カ月の求刑に対し、禁固2年6カ月(執行猶予5年)の有罪判決を言い渡した。

《石田真一》

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