パトカーによる執拗な追跡の事実なし---責任転嫁は受け入れられず

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2000年8月、鹿児島県鹿屋市内で16歳の少年がバイクを運転中に転倒事故を起し、死亡したのは「パトカーによる執拗な追跡が原因でパニック状態になったから」として、鹿児島県を相手に約5500万円の損害賠償を求めて行われた民事訴訟の判決が16日、鹿児島地裁で行われた。

裁判所は「パトカーの追跡が事故原因とする証拠はない」として原告の請求を棄却している。

判決によると問題の事故は2000年8月7日の未明に発生している。大根占町に住む当時16歳の少年が友人と2台のバイクで鹿屋市内を走行中、前方を走っていたクルマを追い越し禁止の場所で追い越した。この様子を目撃していた鹿屋署のパトカーは直後に追跡を開始、少年らのバイクをその後15分間に渡って追跡した。

少年はスピードを上げて逃走したが、速度を出しすぎて右カーブを曲がりきることができずに直進。道路脇の電柱に激突した。少年は激突した際に転倒し、頭を強く打って死亡した。

少年の両親は「息子はパトカーの追跡でパニック状態に陥り、これが原因で事故を起こした。軽微な違反であるにもかかわらず15分間も執拗な追跡を行ったパトカーに事故発生の主因がある」として、鹿児島県(県警)に対して総額5500万円あまりの損害賠償を求める訴えを鹿児島地裁鹿屋支部に起していた。

裁判中、原告側は「事故発生は予見性のあるものであり、事故を回避するためにパトカーは早期の段階で追跡を中断する必要があった」と主張。これに対して被告の鹿児島県は「パトカーはバイクの姿を見失った段階で追跡を打ち切っており、その時間はわずか数分である。追跡と事故発生に因果関係はない」と反論していた。

16日の判決で鹿児島地裁鹿屋支部の丸田顕裁判官は「事故発生当時、少年のバイクがパトカーの追跡を受けていたと認定できる客観的な証拠はなく、そうした事実を推測すべき事情も認められない」として原告の訴えを全面的に棄却する判決を言い渡した。

「パトカーの追跡が原因で事故が起きた」とする訴えは全国各地で起されているが、その大半は逃走中のクルマ(バイク)に巻き込まれる形で他車が事故を起こしたというもの。今回のように追跡を受けていた当事者側が提訴するという例は極めて異例といえる。

《石田真一》

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