野焼きで生じた煙が原因となって発生した今年3月の中央道での多重衝突事故で、山梨県警・高速隊は9日、事故に関係した車両のうち、後方付近を走っていた大型トラックの運転手ら3人を業務上過失致死傷などの疑いで書類送検したことを明らかにした。煙がひどいことを認識しながらも減速せずに進み、停止していたクルマに激突して事故の発端を作り出したことが過失と判断された。
この事故は今年3月20日、山梨県西桂町内の中央自動車道富士吉田線の下り線で発生している。近隣に住む87歳の男性が行った野焼きの火が高速道路のり面にも延焼。これが原因となって猛烈な煙が発生し、視界を失ったクルマが停止したり、減速したところに後方から大型トラックが突っ込み、合計14台が関係する多重衝突事故となった。この事故で13人が死傷している。
警察では今年7月、野焼きを行った男性を「近隣の建造物に延焼させる危険性があった」として失火容疑で書類送検。多重事故を失火によって生じた二次的災害とはせず、「この部分はドライバーに寄与する部分が大きい」として、事故当事者の中から発端となる要因を探すことになった。
二度行われた大規模な現場検証の結果、車列の最後方付近を走っていた大型トラックのドライバーら3人が煙の中に停車しているクルマを認知せず、減速をほとんどしていなかったことがわかった。大型トラックの運転手2人はそれぞれのトラックを80〜100km/hの速度で進行させ、危険回避のために停車中のクルマに激突。9人を死傷させたほか、比較的前方にいた会社員運転の乗用車も減速を怠ったとしている。
この事故では発生当初から「これ以上の走行は危険だと判断して煙の中で止まったドライバーが悪いのか、それとも止まるのは危険と判断して走行を継続させたドライバーが悪いのか」という、二者択一を強いられていた。しかし、警察としては単純に「後から追突したクルマが悪い」というところで落としたようだ。