いつも新鮮な情報をありがとうございます。なぎさドライブウェイでおきた事件の表題「ラリー気分で砂浜を駆け抜けひき逃げ! 夕涼みの会社員重傷」についてメールいたしました。---と、自らラリーに参加し、主催もする堀内健史さんからEメールをいただいた。
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大変悪質な行為について腹立たしいのはもちろんですが、その表題が“ラリー気分”とされていたことにラリー関係者として寂しさを隠しえません。日本において、ラリーを含むモータースポーツが非常にマイナーであるがための表記であると思います。
ラリーとは、公道を使う競技ですから開催前には警察や地域住民の許可を得てから開催となります。その際にたとえ一軒でも説得できなければ、その付近は使用できないことになります。その作業は開催から実に半年以上前から準備する場合もあります。
このたびの表記について、ラリーが競技という名のもとに暴走行為をしていると誤解をされた方から、今まで以上に許可が降りなくなるのは確実。また、ラリーは猛スピードで走るものだから自分にはできないと思った方は参加しようとは思わなくなる。そして、ラリーにあこがれる方は、今回と同じように暴走することでしょう。今回の事件はラリー気分でと言うより、ルーレット族など暴走族と同じように自己満足としか思えません。
実際の日本のラリーは特別計測区間を含むリライアビリティー・ラン・ラリーと言います。特別計測区間は通常SSと呼ばれるもので、クローズされたコースで行われます。この区間は速ければいいのですが、住民の許可や、工事現場と同様の警察からの占有許可がおりにくいため、開催が難しくなってきています。一方リライアビリティー・ランとは、指示平均速度で“ある区間”を走り、その所要時間の誤差を競うものです。ホイールスピンや、イン・カットなどで、距離がずれるのをナビゲーターが補正しながら走ると言う緻密な競技です。
指示平均速度の上限は、法規に基づき上限60km/hです。山の中などで30km/h等の制限がされているところはその速度になります。車両も車検にとおることはもちろんですが、地域によって、ノーマルのマフラーを使って排気音量を下げるなど、レギュレーションで細かく決められています。
にもかかわらず、つい先日知り合いが、競技中に暴走族と間違われ、クルマをけられ、カギを抜かれて持っていかれてしまうという事件もおきております。
メディアを含む多くの方が、日本のラリーに対して正確な認識が無いために誤解され、年々開催数が減り、減衰の一途をたどっています。どうか誤解の生じないよう御一考願います。
堀内健史(ほりうち・たけし)自己紹介:モータースポーツガレージ「ギャロップ」経営。ラリー車製作、海外ラリーメカニックの他、自らもラリーに参加、主催等経験しております。また、ライセンスBコラムニストとして時間のあるときにはコラムを書き、モータースポーツ推進に力を入れていると自負しています。