2021年9月の自動運転、高度運転支援(ADAS)に関するニュースまとめ一覧

自動運転の世界は、いまどんなフェーズを駆け上がり、どこへ向かっているかーーー

そのヒントは、国内で自動運転の舵取り役を担う戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の動きを俯瞰するとみえてくる。SIPは、内閣府がリーダーシップをとり、府省庁の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより科学技術イノベーションを実現するために2014年に創設された国家プロジェクト。

2019年7月までSIP自動運転推進委員会構成員を務め、現在は国土交通省車両安全対策委員、経済産業省・国土交通省自動走行ビジネス検討会委員でもある、国際自動車ジャーナリストである清水和夫氏にSIP 第1期から第2期へと向かう自動運転分野のいま、サポカーと自動運転、物流・移動サービスとオーナーカー、安全と安心感、快適性といった、自動運転まわりのトレンドを聞く。

聞き手は、SIP自動運転推進委員会構成員でモータージャーナリストの石井昌道氏。


清水和夫氏

清水:いまニュースは、MaaS(Mobility as a Service シームレスにつなぐ新たな移動)とかトラックの自動縦列走行やロボットタクシーに注目が集まって、オーナーカーの自動運転は高額な高級車だけにある機能にみえて一般ユーザがついてこないという感じですよね。

需要や関心度としては、過疎地や物流の課題を救う手段として物流移動サービスのほうが高い。オーナーカーの自動運転フェーズはいま高速道路のなかにあって、歩行者事故の分野にはまだ至ってない。だからまだ「高速道路を行く高級車の車内でハンドルから手を離してスマホや雑誌をながめる」といったイメージしか浮かばないかもしれない。

でもね、最初は高額な高級車の自動運転技術であっても、その実現がないとレベル4へもステップアップできないし、オーナーカーがレベル3で培った技術は、物流移動サービスにも波及するから、やっぱり物流もオーナーカーも両面から進化していかないと。

石井:なるほど。では、安全と快適性について。これはどう違うのか。

清水:すでにACC(Adaptive Cruise Control)などはドライバーは当たり前のように使う機能に普及した。前のクルマにロックオンして追従していけば楽だし、最も左の走行車線を一定の速度で行くという選択もできる。そういう意味ではACCは自動車メーカーでは快適技術として位置づけられていた。で、ACCの延長線上に自動運転の技術が生まれてくるとは思いますけどね。

石井:安全と快適性のなかに、安心が入ってこないと、クルマとドライバーが共存できませんよね。

清水:これはもう永遠のテーマで、たとえばタイヤのグリップ性能とウェット性能のように、安全基準を満たしていても安心感はないという事象っていっぱいありますよね。ユーザがその製品に共感できるか否かは、やっぱり「安心かどうか」なんですよね。さらに安心なくして快適はないから、ユーザ目線でいうと安心が前提にあって、安心だから快適があって、楽しさもある。だから底辺は安心、その上に順に快適、楽しさがのる。

清水和夫氏

石井:開発現場では「開発すればするほど、壁が立ちはだかる」っていいますね。やはりレベル3はそうかんたんじゃないと。

清水:大事なのは社会やユーザが何を求めて、自動運転を手に入れたらどんな幸せがあるのか。カスタマーベネフィットみたいなところまで考えていかないと。いっぽうで、自動運転車両は高い買い物なので、スバルのアイサイトを10万円でつけるか、100万円の自動運転機能付き車両を買うかもいろいろあると想うし、駆ってくれないと技術は進歩しないし、普及しないとコストは下がらないし、と。負のスパイラルに陥っちゃう。

石井:その先はけっこう難しそうですね。

清水:高級車から自動運転レベル3が入ってきて、こんどはいかに大衆車に自動運転技術を入れ込んでいくかがカギですよね。でも日本はこれまで、軽自動車にエアバッグとプリテンショナーベルトを一気に導入させた実績を持つ国だから、「これがいいんだ!」って確信したら、オールジャパンでダーッてかなりの勢いで普及すると思いますね。

だから軽自動車側からサポカーが進化して、高級車カテゴリから自動運転がすすんでごその技術が大衆車へおりてくる。その出会うポイントがプリウスとかカローラといったCセグメントで、2024年か2025年といわれてますよね。


インタビュー全文はこちら


  • SIP cafe 自動運転ガイド
  • SIP cafe とは

    SIP cafe とは

    『SIP cafe』は直面する次世代モビリティについて考え、自動運転のいま、自動運転がもたらす未来社会について情報を発信していくコミュニティサイトとして2019年10月に開設。一方的な最新情報の発信だけでなく、広く多くの人たちが集まって議論していくための“広場”としての役割を担う。SIP cafeの主宰であり“マスター”の清水和夫氏は、「反対する意見もどんどんぶつけあって、議論していく場所にしたい」と語っている。

    » 詳しくはこちら
    1 2 3 > 次
ボルボ、自動運転トラックのプロトタイプ発表…北米で実用化へ 画像
自動車 テクノロジー

ボルボ、自動運転トラックのプロトタイプ発表…北米で実用化へ

ボルボグループ(Volvo Group)は9月28日、自動運転トラックのプロトタイプを米国で発表した。

ADASは必要、最も必要とされる機能は?…利用実態 イード調査 画像
自動車 テクノロジー

ADASは必要、最も必要とされる機能は?…利用実態 イード調査

自動車総合ニュースサイト『レスポンス』を運営するイード)は、『ADAS利用実態調査』と題し、ADAS(先進運転支援システム)に関する認知アンケート調査を行なった。自動運転化社会に向けたステップとして先進安全装備・機能の需要性を捉えることが調査の目的だ。

BMW、自律移動型ロボットの試験運用を開始…屋外での使用は初 画像
自動車 テクノロジー

BMW、自律移動型ロボットの試験運用を開始…屋外での使用は初

BMWは9月27日、工場内で部品などを自動運転で運ぶ「スマート・トランスポート・ロボット(STR)」を、屋外で初めて試験運用するプロジェクトをドイツ・ディンゴルフィン工場で開始した、と発表した。

トヨタ・ウーブンプラネット、自動車向けOS開発の米レノボモーターズを買収 画像
自動車 ビジネス

トヨタ・ウーブンプラネット、自動車向けOS開発の米レノボモーターズを買収

トヨタグループでソフトウェアを中心としたモビリティの開発を担うウーブン・プラネットは9月28日、自動車向けオペレーティングシステム(OS)開発の米国・レノボモーターズを買収したと発表した。

コンチネンタル、ロボットカー発表へ…ITS世界会議2021 画像
自動車 テクノロジー

コンチネンタル、ロボットカー発表へ…ITS世界会議2021

コンチネンタル(Continental)は、10月にドイツ・ハンブルクで開催されるITS世界会議2021において、未来のモビリティのためのロボットカーを初公開する。9月22日、コンチネンタルが発表した。

「自動運転・隊列走行 BRT」の実証実験を開始…新設専用テストコースで JR西日本とソフトバンク 画像
自動車 テクノロジー

「自動運転・隊列走行 BRT」の実証実験を開始…新設専用テストコースで JR西日本とソフトバンク

西日本旅客鉄道(JR西日本)とソフトバンクは9月27日、自動運転と隊列走行技術を活用したBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)の実証実験を、本年10月より滋賀県野洲市に設けた専用テストコースにおいて開始すると発表した。

自動運転路線バス実現のカギ、埼玉工業大学と深谷観光バスが語る…東京大学ITSセミナー 画像
自動車 テクノロジー

自動運転路線バス実現のカギ、埼玉工業大学と深谷観光バスが語る…東京大学ITSセミナー

地域課題の解決や、自動運転技術などの普及・促進にむけて、新技術をどう導入・実装するか、そのための産業・企業育成をどうすすめていくか……。

不具合指摘が多いカテゴリーは「運転支援」…自動車初期品質調査 JDパワー 画像
自動車 テクノロジー

不具合指摘が多いカテゴリーは「運転支援」…自動車初期品質調査 JDパワー

J.D.パワージャパンは、2021年日本自動車初期品質調査の結果を発表。不具合指摘が最も多かったのは「運転支援」であることがあきらかになった。

中山間地域における自動運転移動サービス 道の駅「赤来高原」で本格導入 画像
自動車 テクノロジー

中山間地域における自動運転移動サービス 道の駅「赤来高原」で本格導入

国土交通省は9月21日、中山間地域における道の駅などを拠点とした自動運転サービスを、中国地方で初となる道の駅「赤来高原」(島根県飯南町)に本格導入すると発表した。

ZMP、走行データと同期した搭乗者の眠気・感情データを提供開始 画像
自動車 テクノロジー

ZMP、走行データと同期した搭乗者の眠気・感情データを提供開始

ZMPは、走行データ計測ソリューション「RoboTest」の新サービスとして、車両走行時の搭乗者の眠気や感情に関するデータ提供を開始する。

トヨタのミニバンがベース、自動運転プロトタイプ発表…米国で走行テストへ 画像
自動車 テクノロジー

トヨタのミニバンがベース、自動運転プロトタイプ発表…米国で走行テストへ

自動運転技術を手がけるオーロラは9月20日、トヨタとの戦略的提携の最初の成果として、トヨタのミニバンベースの自動運転車のプロトタイプを発表した。

自動運転車で子どもと高齢者を見守り---実証事業 画像
自動車 テクノロジー

自動運転車で子どもと高齢者を見守り---実証事業

長大、奈良県三郷町、パナソニックシステムソリューションズジャパン、アイサンテクノロジー、損害保険ジャパンなどは9月21日、自動運転車に搭載したカメラとAI画像認識技術を活用して見守りを高度化する実証事業を実施すると発表した。

ステランティス、危険情報の事前警告システムをテストへ…最新コネクトカー技術を活用 画像
自動車 テクノロジー

ステランティス、危険情報の事前警告システムをテストへ…最新コネクトカー技術を活用

ステランティス(Stellantis)は9月17日、最新のコネクテッドカー技術を活用して、ドライバーに危険情報を警告するテクノロジーを北米でテストすると発表した。

自動運転フォークリフトとトラックが連携して待機時間を短縮 豊田自動織機など実証へ 画像
自動車 テクノロジー

自動運転フォークリフトとトラックが連携して待機時間を短縮 豊田自動織機など実証へ

豊田自動織機、日立物流などは9月17日、物流施設内でのトラックの積卸し自動化と待機時間削減に向けてAIを搭載した自動運転フォークリフトを活用してトラック運行と連携させる共同実証事業を開始すると発表した。

フォード、自動運転車でラストマイル配達へ…ウォルマートと提携 画像
自動車 テクノロジー

フォード、自動運転車でラストマイル配達へ…ウォルマートと提携

フォードモーター(Ford Motor)は9月15日、ウォルマートとアルゴAIと提携を結び、自動運転車によるラストマイルの配達サービスを開始すると発表した。

    1 2 3 > 次
Page 1 of 3