1.市場概況
2025年の国内デジタルマーケティング市場規模は、事業者売上高ベースで4,201億2,000万円と推計した。2026年の同市場は、前年比114.0%の4,789億円に成長すると見込む。
市場を牽引する最大の要因は、AI活用に取り組むユーザー企業でのデータ整備需要である。AIを高度に活用するには、データの質と量に大きく依存することが認識されるようになり、自社固有のデータを整備し、活用することの重要性が高まっている。なかでも、顧客データはAI活用における競争力の源泉となる。AIを活用し、個々の顧客に最適な営業・マーケティング活動を実践するため、顧客データを収集した上で蓄積し、活用するといった仕組みとしてのデジタルマーケティングツールへの投資意欲が一層高まっている。
また、この動きは、新規導入の拡大に直結するとともに、既存ユーザー企業においても活用の深化・定着が進むことで市場拡大に寄与している。従来、デジタルマーケティングツールは導入後における活用の定着が課題とされてきたが、AI活用を見据えたデータ整備の必要性が経営課題として認識されるようになったことで、これらを積極的に活用しようとする機運が高まっている。さらに、生成AIを活用したFAQや操作サポート機能の充実も相まって、ユーザー企業の自律的な活用を後押ししている。

2.注目トピック~AIエージェントがツールのあり方を変える
2024年末以降、生成AI技術の進展やAIエージェントの普及を背景に、SaaS※1というビジネスモデルの持続可能性を問う議論が業界全体に広がった。AIエージェントが人間の代わりにタスクを自律的に実行するようになれば、従来の「シート数(ライセンス数)×月額」という課金形態が成り立たなくなる可能性がある。これに対して、既に一部のベンダーでは、利用量に応じた従量課金やタスク処理件数、生み出した成果に応じた成果報酬型といった課金形態への転換が進められている。また、システムの接続性とインターフェースの転換も避けられない課題となっている。AIエージェントはAPI※2やMCP※3を通じてツールを直接操作するため、これらへの対応が遅れたツールは、機能の優劣以前に選定候補から外れるリスクがある。従来は画面の使いやすさが差別化のポイントであったが、今後はAIエージェントとの接続性が、ベンダーの新たな評価軸になると考える。
※1 SaaS(Software as a Service):ソフトウェアをインターネット経由でサービスとして提供する形態
※2 API(Application Programming Interface):異なるソフトウェア同士がデータや機能をやり取りするための接続口
※3 MCP(Model Context Protocol):AIエージェントと外部ツールを統一された規格でつなぐための標準仕様
3.将来展望
デジタルマーケティング市場は、引き続きAI活用を見据えたデータ整備需要の高まりにより、拡大すると見込む。加えて、各ツールへのAI機能の実装・強化及びユーザー企業でのAIエージェントの普及が進むことで、より高度な営業やマーケティング活動を実践できるようになり、ツールの活用範囲と利用深度がさらに広がることも、市場拡大を後押しする要因になると考える。
AIエージェントが適切に機能するためには、顧客の行動履歴・購買背景・商談経緯といったコンテキスト(文脈情報)が不可欠である。質の高いデータを保有するツールほど、AIエージェントが参照し、活用する情報基盤として機能しやすいという優位性が生まれる。一方、AIエージェントの普及速度は企業規模やデジタル活用の成熟度によって異なる。大企業では自律型AIエージェントの本格的な活用が進む一方、中堅・中小企業では引き続きツールの導入や定着支援が重要な課題として残る。ユーザー企業が求めるものは状況によって大きく異なり、有効な戦略も変わる。ベンダーは、どのようなユーザー企業向けて価値を提供するかを起点に、製品・機能・サポート体制を一貫して設計することが求められる。
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調査要綱
1.調査期間: 2026年4~6月
2.調査対象: MA、CRM/SFA、CDP、デジタルマーケティング領域におけるAI関連サービスを提供するベンダー等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、一部電話やメールによる調査、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2026年6月30日
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