ほとんど全ての自動車に装備されているバックミラー。ルームミラーやインナーミラーなどとも呼ばれ、後方確認のためになくてはならないパーツである。しかし、当たり前の装備であるがゆえに、普段からその存在を強く意識することのない“黒子的”な存在と言えるのではないだろうか。
近年は、高級車を中心に自動で眩しさを低減してくれる「自動防眩ミラー」や、カメラの映像を映す「電子インナーミラー」の採用が進み、従来の「後方を映す鏡」から機能が大幅に進化している。そんな自動防眩ミラーと電子インナーミラーで高いシェアを誇るのが、アメリカに本社を構えるジェンテックス(GENTEX)だ。
ジェンテックスの設立は1974年と50年以上の歴史を誇り、自動防眩ミラーの出荷数は年間約4500万個(2025年)でシェアは8割強、電子インナーミラーの出荷数は年間約320万個(2025年)でシェアは7割弱を誇る。
ジェンテックスの電子インナーミラーは「フルディスプレイミラー(FDM)」と呼ばれ、世界140車種以上に採用されている。日本市場では、2017年に発売されたレクサス『LS』に第1世代が採用されて以降、トヨタ『クラウン』シリーズやレクサス『RX』には、第2世代をベースに改良された第2.5世代が搭載されており、第3世代に関しても海外市場で採用が進んでいる。
近年はFDMの需要が世界的に増加しているそうで、日本法人の代表取締役社長を務める藤田大輔氏は「(ジェンテックスは)ミラーのイメージが強いが、カメラやセンシング技術を含め、後方を映す機能だけでなく、快適や安全性に寄与する製品を抱えている」と話す。

◆夜間に威力を発揮する、第4世代電子インナーミラー
今回は、ジェンテックスの最新のFDMや「DMS/ICMS(ドライバー・モニタリング・システム)/イン・キャビン・モニタリング・システム」、さらに同社の調光技術を活用したサンバイザーを体験した。
FDMは、「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー2026(CES2026)」で公開された、最新の第4世代のものだ。
前述したように、高級車だけでなく「RAV4」といった大衆車にまで徐々に採用が拡大する電子インナーミラー。一般ユーザーが触れる機会も徐々に増えているが、従来の電子インナーミラーは、目の焦点が合わない、後方との距離感が掴みづらいという声があった。

さらに、強い光を受けて発生するハレーションや、暗闇でノイズがのるなど映像の鮮明さにも課題が残る。
筆者も電子インナーミラーが出始めの頃は、見え方の違和感からあえて物理的なミラーに切り替えて使用していたが、ラゲッジに荷物をたくさん積んだ状態でも後方視界を確保できる点や、ドライブレコーダーとの連携機能といった利便性もあり、いまでは愛車に汎用品を後付けして使用している。
「電子インナーミラーを通じて、見えないものが見えるようになるという大きな技術革新があった。(従来品では)見にくいといったネガティブな経験をされた方もいると思うが、『ここまで電子インナーミラーが進化するんだ』というところを本日感じていただきたい」(藤田社長)

今回体験した第4世代には、「ダイナミック・ビュー・アシスト」と呼ばれる機能が搭載されている。
ダイナミック・ビュー・アシストは、低速時に画角が広角になる機能や、後退時に車両下方を映す機能、さらには、クルマ側のCAN通信と連携し死角にいる車両を表示するために横方向に拡大する機能などが搭載される。
実際に試してみると、まず映像が非常にクリアで滑らかなことに驚く。画角の切り替えも自然で、今回はデモのために画角を右上に数値で表示していたが、数値がなければほとんど気づかないほど。
同社によると「スピードが出てきた時に画角が広いと、速度感や距離感が掴みづらくなる。人間の目も同じで、速度が上がると視野角が狭くなっていく。情報が多すぎると(脳が)混乱するので、通常のミラーと同じ画角まで狭くしている」という。

画角は112度~54度の範囲で調整されるが、54度の場合は死角が増えてしまうため、車両側の「ブラインドスポットモニタリング」と連動して、死角部分の映像をポップアップ表示で補う機能も搭載されており、通常のミラー以上に安全性も高い印象だ。将来的には、近づく歩行者を目立つようにアラートを出すといったこともできる。
なお同社によると、どれだけ機能を実装するかはOEM側の判断だそうで、安全性を重視し積極的に推し進めるメーカーもあれば、ユーザーがノイズと感じてしまうことを防ぐために必要最小限の表示に止めるメーカーもあるという。映像の色味などもOEMごとにチューニングするそうで、各社で考え方や好みが異なるそうだ。
そしてこの第4世代の真骨頂は、夜間に威力を発揮する。今回のデモで使用した第4世代は、ミラーだけでなくカメラも独自のものを使用しており、画像処理の自由度が格段に高いという。
そのため、現在市場に出回っている一般的な製品よりも、一段も二段も夜間の映像の鮮明だ。まるで自分の目が良くなったと錯覚するほど。


今回は第2.5世代とも比較も行ったが、映像にのるノイズやハレーションが抑えられており、後ろのクルマだけでなく、画面端に映る遥か後方の人やクルマまで鮮明に確認することができた。
近年はヘッドランプに直行性の高いLEDを使用する車種が増えており、オートハイビームなどの技術も発達したためか夜間に眩しさを感じるシーンが増えた。第4世代は、LED特有の眩しさやハイビームを見やすく処理しているため、眩しさも感じずにクルマ周辺をハッキリ確認することができ、暗所も鮮明に映っていた。
なお、夜間の安心感が大きく増すなど良いことづくめの第4世代だが、今回のデモ車はジェンテックス製のカメラと組み合わせた映像が映し出されている。近年は車両に搭載されるカメラの量が劇的に増えており、どのメーカーのカメラを使用するかは、認証のハードルもあるためメーカーの判断に委ねられているのが課題だそうだ。
◆「車内の一等地」を活かしたモニタリングシステム

続いては「DMS/ICMS(ドライバー・モニタリング・システム)/イン・キャビン・モニタリング・システム」のデモを体験した。
一般的には「OMS(オキュパント・モニタリング・システム)」とも呼ばれ、欧州では2024年に新型車への搭載が義務化されている。説明員によると「オキュパント(=乗員)」では「乗員の検知」というイメージにつながるため、ジェンテックスでは「車内全体の様子を検知する」というより広義の意味で「イン・キャビン」と呼称しているそうだ。









