いすゞ自動車が5月14日に発表した2024年3月期の連結決算は、売上高は前期比6.0%増の3兆3866億円、営業利益が同15.6%増の2930億円、当期純利益が同16.3%増の1764億円と、売上高、利益とも過去最高を更新した。ただ、販売面では課題が残る決算だった。
◆安定的に稼げる体質ができた
「24年3月期は重要市場であるタイで、ピックアップトラックの需要が前年比4割減となり、損益的に大きなマイナスインパクトを受けた。しかしながら、会社全体では売上高、利益とも過去最高を達成することができた。過去に長らく進めてきた事業基盤強化の活動が実を結び、日本および世界各国市場で安定的に稼げる体質ができた結果だと考えている」と南真介社長は評価する。
しかし、グローバル販売台数については、約66万6000台と前期に比べて11.3%も減少した。南社長が言うように、特にタイでのピックアップトラックの落ち込みが大きく、約7万4000台(36%)も減少して約12万8000台だった。ピックアップトラックを含めたLCV市場でのいすゞのシェアは41%で前期に比べて大きな変化はなかったが、乗用車を含めた自動車市場では、23年3月期の24.4%から17.7%へと大きくシェアを下げた。
「金利が非常に高くなって、与信がなかなか行われなかった。特にわれわれのユーザーである中小の事業者に対しては非常に厳しい状況だった」と南社長は話す。
そんな販売状況でも、過去最高の業績を残せたのは、原価低減活動やアフター事業の収益向上、車両価格の引き上げが奏功したからだ。特に、車両価格の値上げについては、希望通りできたようで、そのうえ円安も加わった。営業利益の増減益要因を見ると、価格対応で745億円、為替変動で170億円の増益となっている。
◆タイ市場はさらに悪化
重要市場のタイについては、25年3月期についても厳しい状況で、販売台数はさらに悪化して9万台を計画する。「過去において、だいたい15万台、多いときには18万台という市場のレベルだったので、多いときと比較すると半分で非常に異常な状況になっている。下期には底入れして、中期的なスパンでは回復してくると見ている」と南社長は話し、9万台は非常に堅めに見た数字だという。