自動運転技術は次のステップへ、SIP-adusにおける取り組みと成果

日産の先進運転支援技術「プロパイロット」(SIP-adus 試乗会)
  • 日産の先進運転支援技術「プロパイロット」(SIP-adus 試乗会)
  • プレゼンテーションの様子(SIP-adus 試乗会)
  • SIP-adusのプログラム・ディレクターである葛巻清吾氏
  • プレゼンテーションの様子(SIP-adus 試乗会)
  • プレゼンテーションの様子(SIP-adus 試乗会)
  • プレゼンテーションの様子(SIP-adus 試乗会)
  • プレゼンテーションの様子(SIP-adus 試乗会)
  • 東京臨海部実証実験テーマリーダー南方真人氏

SIP(Strategic Innovation Promotion Program)は、政府が掲げるSociety 5.0を実現するための取り組みのひとつだ。SIPの活動のうち、自動運転技術の協調領域を整備し民間のビジネスやイノベーションをサポートするのが「SIP-adus」。SIP-adusの活動は2014年6月に始まり、2018年4月から2期目に入っている(なお、2023年3月に第2期は終了する。第3期については現在検討中)。

SIP-adusのプログラム・ディレクターである葛巻清吾氏が、9月末に開催されたSIPプログラムの中間成果発表の場で、メディアや関係者に向けた講演を行った。その内容をベースに、SIP-adus第1期および第2期の主な成果についてまとめる。

日米自動運転研究のアプローチの違い

ティアフォーブース

アメリカの自動運転車両研究では、DARPA(アメリカ国防総省高等研究計画局)が主催する「DARPA Challenge」が有名だ。アルファベット(Google)などが研究している無人タクシーの実用化というアプローチもあるが、無人カーは、戦略物資の輸送他に利用できる無人車両の開発技術を育てる目的もある。一方で、日本における自動運転技術は、交通事故低減、自動走行システムの実現、次世代公共交通システムの実用化という3本柱をプロジェクトのビジョンに据えて活動している。

SIPの活動が政府プロジェクト(Society 5.0)に準ずるものなので、SIP-adusの取り組みは技術開発だけではない。国際連携や標準化、社会的受容度醸成、規制改革・制度整備といった、社会・経済の課題解決もミッションに含まれる。

ちなみにDARPAは、国防総省の下部組織だが予算は独立しており、予算行使もDARPAが決めることができる。軍事に直接関係ない事業やプロジェクトも支援している。DARPAの役目は軍事技術の研究開発ではなく、民間の技術やイノベーションを後押しすることで、結果的に国防にも役立つ技術開発を促進させることにある。

高精度3Dマップは自動運転ビジネスのインフラ

SIP-adusのプログラム・ディレクターである葛巻清吾氏

第1期(2014年~2019年)の一番の成果は高精度な3Dマップだろう。自動運転において制御アルゴリズムやセンサー技術などは機能や商品価値に直結するため市場原理が働く競争領域だ。高精度な地図も差別化要素になり得るが、作成にはコストがかかるので、すべてのOEMやサプライヤーが用意できるものではない。

各社が同じようなデータを作成、維持管理するのも効率的ではない。標準化された地図データを共通で利用できれば、業界全体が位置情報や自動運転に関係した付加価値ビジネスを創出しやすくなる。結果として市場が活性化する。


《中尾真二》

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