新型「ランドクルーザー」の納期はなぜ長いのか あの地域との深い関係とは

2021年:ランドクルーザー300系(ステーションワゴン)=新型
  • 2021年:ランドクルーザー300系(ステーションワゴン)=新型
  • 新型 トヨタ ランドクルーザー 300系
  • 2007年:ランドクルーザー200系(ステーションワゴン)
  • 1998年:ランドクルーザー・シグナス。100系(ステーションワゴン)の最上級仕様で、レクサスLXと兄弟車。
  • 現役のランドクルーザー40系(2019年ごろ)
  • 1990年:ランドクルーザー70系(ヘビーデューティ)
  • 1998年:ランドクルーザー100系(ステーションワゴン)
  • グローバル累計販売台数(~2019年、単位は1万台)

新型になったランドクルーザー(300系)は、納期がとても長い。メーカーは「契約から納車までに1年以上を要する」としているが、販売店では「今は2年以上に達しており、正確な納期をお伝えできない」という。

納期が2年以上では、ユーザーも困る。2年後には転勤している可能性もあり、企業によっては海外拠点で働いていることも考えられる。納期が長すぎて、購入に踏み切れないユーザーも多いと思う。

新型ランドクルーザーの納期は、なぜ2年以上なのか。先代型は長くても半年程度だったから、新型では大幅に延びた。納期が遅延している理由を開発者に尋ねると、以下のように述べた。

「ランドクルーザーは海外の需要が多い。生産総数の50%以上が中東で販売される。そこにロシアとオーストラリアを加えると90%に達する。新型は海外でも人気がきわめて高く、これにコロナ禍の影響も加わり、納期が大幅に延びた」。2018年:地域別販売台数(単位は1万台)2018年:地域別販売台数(単位は1万台)

具体的には、ランドクルーザーのどのような魅力が海外の好調な売れ行きに結び付き、納期を延ばしているのか。この点も尋ねた。

「一番の魅力は、悪路の優れた走破力と耐久性だ。海外には立ち往生したら生命に危険が及ぶルートも多い。従ってランドクルーザーでは、必ず生還できることが使命になる。走破力が優れ、なおかつ絶対に故障しない信頼性を徹底的に高めた。そのためにランドクルーザーは、新型もハイブリッドシステムを採用していない。万一、故障の原因になったら困るからだ。このクルマ造りが、世界のお客様、特に中東、ロシア、オーストラリアといった過酷な地域の方々から高く評価された」。新型 トヨタ ランドクルーザー 300系新型 トヨタ ランドクルーザー 300系

ランドクルーザーはどのように使われているのか。「日常的な移動のほか、顧客を乗せて砂漠を走破するツアーなども実施されている」。砂漠の走行では、横転の危険も伴う。専門的な運転技術と併せて、悪路における優れた走行安定性も重要だ。

このように中東などには、ランドクルーザーが真価を発揮する場面が多い。中東といえば裕福な印象が強く、ランドクルーザーの豪華さが人気を呼んでいる面もあるだろうが、本質は悪路の走破力だ。生命に係わるから、車種選びも厳格に行われ、信頼性の高いランドクルーザーに特化されて納期も延びている。

《渡辺陽一郎》

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト 1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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