イード、CES2021レポートを発表....変化したライフスタイルと新たな課題の解決に向けた動き

GMが発表した電動パレット「EP1」。配送車から玄関先までのラストマイルを支援する
  • GMが発表した電動パレット「EP1」。配送車から玄関先までのラストマイルを支援する
  • GMC ハマーEV
  • MBUXハイパースクリーン
  • 日本のスタートアップ企業Quantum Operationが発表した、針を用いない血糖値センサー
  • サムスンが発表した高機能おそうじロボット「ジェットボット90AIプラス」
  • サムスンが発表した高機能おそうじロボット「ジェットボット90AIプラス」
  • GMが発表した電動パレット「EP1」。配送車から玄関先までのラストマイルを支援する
  • GMC ハマーEV


株式会社イード(本社:東京都中野区、代表取締役:宮川 洋、以下 イード)は、「海外展示会レポート」として、今年1月11日(月)~1月14日(木)にアメリカ・ラスベガスで開催された「CES2021」の調査レポートを発表した。


「海外展示会レポート」とは


イードでは、CESや各国モーターショーを代表とする海外の自動車・IT系の展示会を、CASEやMaaS目線で調査レポーティングし、販売を行っている。

納品物は各展示会毎に30~50ページのPPT(パワーポイント)レポート、お客様のオフィス等にお伺いし実施するプライベートセミナー(オンラインでの対応も可能)。


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完全オンラインとなったCES2021は...


新型コロナウイルスの影響で、すべての展示がオンライン開催のみとなった今年のCES。当然のことながら、展示内容は世相を反映したものになった。期せずして大きく変わってしまったライフスタイル、いわゆるニューノーマルはかれこれもう1年近くも続いており、そのなかで浮かび上がってきた課題に対して、テック業界はどのような解決策を提示したのだろうか。

イードでは今年もCES2021の動画レポートを作成、販売を開始した。CES全体のトレンドを4つのテーマに整理し、具体例を挙げながら、ニューノーマルの課題解決に臨むテック業界・モビリティ業界の胎動を動画で説明する。

本稿ではそのレポートのダイジェストとして、テーマごとに解説していく。

スマートホーム


サムスンが発表した高機能おそうじロボット「ジェットボット90AIプラス」

ひとつ目に挙げるテーマは「スマートホーム」だ。アメリカでも新型コロナウイルスによるロックダウン・外出自粛が長期化しており、ワークフロムホームを快適にするためのニーズが高まっている。「おうち時間」を快適に過ごすための提案は数多くみられた。

象徴的だったのが、家庭の水回り製品を得意とする大手メーカー、コーラーが発表した、日本のお風呂からインスピレーションを得たバスタブだろう。四角くて深さのあるバスタブからあふれたお湯がヒノキ材に溢れ出し、心地よい音を立てる。同時にお湯の表面に霧を発生させ、深いリラクゼーション効果を演出する。エッセンシャルオイルで爽快な香りを楽しむことも可能だ。

サムスンは、家電メーカーからは、高機能なおそうじロボット「ジェットボット90 AI+」を発表した。カメラやLiDARを搭載し、取得したデータをAIで解析することでオブジェクトを認識、あらゆる"散らかり"を特定しどのような掃除が必要かを認識できる。例えば、床に散らかるケーブルや衣服、あるいはペットの粗相などを判断し、避けて走行することが可能だ。今年の上半期に発売される。

家庭用の電力デバイスを得意とするフランスのシュナイダーは、スマートホームの電力利用を最適化するソリューション「Wiser」を発表した。Wiserを通じて、電力消費量の監視、停電時の蓄電残量と残り時間、充電時間帯の最適化と連携するスマート家電の無駄遣い監視、ソーラーパネル発電量の監視などが可能となる。

家で過ごす時間が増えるに伴い、電気代がかさんでいる現状や、特に西部三州で山火事による停電も頻発しており、そのような課題に対する提案にもなっている。

蛇口やシャワーヘッドなどで知られるモエンは、”スマート蛇口”「U by Moen Smart Faucet」を発表した。GoogleアシスタントやAlexaなどの音声アシスタントを通じて、出す水の水温や吐出量を音声で指定することができるものだ。例えば「60度のお湯を1カップ」とリクエストすれば、蛇口の下に容器が置かれたことを検知して吐出する。

イスラエルのベンチャー企業バイアーは、家庭用のセンサー「バイアーホーム」を展示。カメラ無し、ウェアラブルデバイス無しで居住人をセンシングするデバイスだ。壁に設置したデバイスによってミリ波レーダーで点群データを取得し、居住人の動きをAIで解析、居住人が倒れるなどの異変が起きた時にはそれを検知しアラートを出す。

スマートシティ


GMが発表した電動パレット「EP1」。配送車から玄関先までのラストマイルを支援するGMが発表した電動パレット「EP1」。配送車から玄関先までのラストマイルを支援する

この1年でニューノーマルが定着したため、スマートシティに求められる要件も大きく様変わりした。CESにおいても、新たなニーズに対する提案が目立った。

例えばパナソニックは、ドライブスルーの接客効率をアップするシステムを提案。車社会のアメリカでは以前にもましてドライブスルーの利用が増加しており、長時間の順番待ちが顧客のストレスになっていることが背景だ。バックエンドの在庫と連携したタフブックタブレットを接客時に利用し、時間当たりの顧客対応数を向上させることができる。

また基調講演に登場したベライゾンは、5Gの大容量・低遅延によるメトロポリタン美術館の遠隔アート体験を提案した。最新の3Dレンダリング技術を活用し、遠隔でどこからでもリアルにアート作品を学ぶことができるというもの。学校のロックダウンやオンライン授業が続くアメリカでは、教育の断絶が社会的な話題になっていることも背景にありそうだ。

そしてベライゾンはこのような遠隔教育への支援も表明した。2030年までに1000万人のデジタル教育格差を埋めていくために500億ドルの支援だけでなく、既に100の学校に5G設備を設置すること約束している。

物流もまた大きな変化にさらされている分野のひとつだ。個人宅への物流が増え、ポストコロナにおいてもその傾向は続くとされており、配送バンから玄関先までのラストマイルのソリューションは効率アップに欠かせない。スカイワード、UPSとベライゾンが発表した5Gドローン配送実証実験は、ドローンによるラストマイル効率化を狙うものだ。

そして、電動化を全方位的に推進すると宣言してショーの主役となったGMは、EVを活用し物流を包括的に支援するサービス「ブライト・ドロップ」を起ち上げると発表した。EV・テレマティクス・フリート管理システムで環境に対応した物流の効率化を支援するものだ。

まず発表されたのが、配送バンから玄関先まで自律移動する電動パレット「EP1」。フェデックスの実証実験でEP1の活用によって1日当たりの配送量が25%アップした。

EP-1と組み合わされるのは小型EVトラック「EV600」。2021年後半に物流大手のフェデックスに500台供給し、22年以降に市販する予定。フル充電で最大400kmの航続距離を実現し、貨物スペースの容量は1万7000リットルを確保した。

サイバー化するEV


GMC ハマーEVGMC ハマーEV

アメリカにおけるEV市場は、その約8割を占めるテスラの独壇場である。これはつまり、エコロジー訴求だけでは顧客を獲得できないことの証左とも言えるだろう。今回GMが発表したEVも、エコ訴求というよりも、テスラのEVを買い求めるような顧客層に訴える「サイバーカー」ともいうべきEVの提案となった。

GMのトラックブランドGMCからは、HUMMER EVが登場した。世界初のEVスーパートラックを謳い、2021年の秋に発売予定。電動車ならではの爆発的な加速力や、精緻なトルク配分による悪路走破力をアピールする。1000馬力で0-100キロ加速はなんと3秒。エンジンでは到底実現できない怪物級のパフォーマンスをゼロエミッションで実現する、いわばサイバーなモンスターだ。

同時に展示されたGMのラグジュアリーブランドであるキャディラックの新型EV「リリック」「セレスティック」、これらについても環境性能のアピールはなく、ダッシュボード全面を覆うディスプレイによるサイバーなHMIや、電子制御が進む豪華なインテリアのアピールに終始した。

またメルセデスは、まもなく発売される同社のラグジュアリーEVサルーン「EQS」に搭載される新世代HMIシステム「

MBUXハイバースクリーン」を発表した。3つのOLEDディスプレイを、左右141cmにもなる巨大な1つの湾曲スクリーンに集約したもので、複雑化するファンクションを顧客が迷いなく利用するための「ゼロ・レイヤーの原則」を採用し、20を超える機能の中から、AIが様々な状況から必要な機能を最上位に表示する。

ヘルス&ウェルネス


日本のスタートアップ企業Quantum Operationが発表した、針を用いない血糖値センサー日本のスタートアップ企業Quantum Operationが発表した、針を用いない血糖値センサー

4つ目に挙げるトレンドは「ヘルス&ウェルネス」とした。ライフスタイルの変化により、人々の健康管理のしかたも変化しており、それに対応したソリューションが活況であった。特に、生体情報をセンシングしてデータをAIで解析することで健康管理や異常を検知する機能を提案するものが非常に目立った。

例えばボッシュの腕時計型ウェアラブルデバイス「BHI260AP」は、センサーによって利用者が何の運動をしているのかを検出し、具体的なフィットネス・アクティビティとして記録したり、利用者のフィットネスをコーチングする機能もある。

日本のスタートアップ企業であるQuantum Operationは、世界初の針を用いない血糖値ウェアラブルセンサーを発表。LEDおよびフォトダイオードを使い、独自のスペクトラム安定化技術やノイズ除去技術によって高精度かつ再現性あるデータ取得を実現するものだ。

アメリカのスタートアップBioIntelliSenseは「BioButton」を発表。胸元に貼り付けるタイプのバイタルセンサーで、専用のモバイルアプリ「BioMobile」と連携し、安静時の体温、心拍数、呼吸数を継続的にモニタリングすることができ、感染の疑いのある傾向を早期に検出することができる。

そしてオムロンはVitalSightを展示した。血圧計と体重計をコネクテッドさせ、医療クラウドに繋ぐ事で高血圧患者の自宅での遠隔医療を可能にするシステムで、ユーザーはいつも通り血圧や体重を測るだけで数値が自動的に記録される。記録されたデータは医師と直接つながっているため、異常値や観察を必要とする数値になった時には医師から即時にアラートが出せる。

総括:ニューノーマルへの提案が活況


オンライン開催となったため、会場を歩き回って全体のトレンドを体感する、ということはできなかったが、逆に言えばすべての情報がオンラインになっているため、特定の企業やキーワードを想定して情報を集めることは、むしろやりやすくなった。

そのような状況で、基調講演やプレスカンファレンス、CTA(CES主催団体)が提示した今年のトレンドなどを手掛かりに情報を集めまくった結果、全体を通して感じたのが、ニューノーマルへ移行したことによって生じた新たな課題やニーズに対して、どの企業もいち早く対応し、動き始めているということだ。そんなテック業界の胎動がはっきりと感じられた今年のCESであった。


レポートの販売について


本調査レポートはご購入可能です。

価格:400,000円(税別)
ページ数:PPT/A4/115ページ
納品物:レポートPPT、報告会


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《佐藤 耕一》

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