車両500万台のビッグデータ収集実験など着実に成果…トヨタとNTTがコネクティッドカー向け基盤開発で中間報告

トヨタ・NTTのコネクティッドカー向けICT基盤共同開発
  • トヨタ・NTTのコネクティッドカー向けICT基盤共同開発
  • トヨタ 村田賢一主査
  • NTTデータ 古賀篤部長
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トヨタ自動車とNTTは12月5日に都内で記者会見を開き、両社が2017年3月から共同で進めているコネクティッドカー向けのICT(情報通信技術)基盤に関する研究開発の進捗状況を説明した。

この共同開発は、トヨタとNTTグループが有する技術やノウハウを持ち寄ることで、事故防止や利便性の向上などコネクティッドカーの技術開発を促進させ、社会的課題の解決にもつなげる狙い。そのために、両社は(1)車両からもたらされる大容量データ(ビッグデータ)の収集・蓄積・分析、(2)車両のデータを収集するためのネットワークとデータセンターの確立、(3)次世代通信技術である「5G」の自動車向け標準化の推進、(4)車両での音声対話技術(エージェント)の高度化―という4領域での研究開発に取り組んでいる。

今回の記者会見は開発の状況を「中間報告」として、外部に公表するために開いた。両社は2018年度からさまざまな開発テーマに基づく実証実験に着手しており、当面は2020年度まで実験を継続していくことが決まっている。中間報告では車両データの収集・蓄積というICT基盤の評価や、障害物の検知・伝達などコネクティッドカーへの実際の応用の成果を示した。

車両データの収集・蓄積に関する実証実験ではコンピュータを使ったシミュレーションによって500万台分に相当する車両データを生成し、一部の実車データと共にデータセンターに送り、センター側の負荷や課題などを確認したという。19年度は車両データを数千万台分にまで拡大して実験を重ねている。

一方、コネクティッドカーへの実際の応用実験では、道路上の障害物を発見した車両がセンターに画像情報などを送り、後続の車両が安全に回避して走行できるよう情報を伝達するなどの実験を、一般の道路を使って行っている。障害物の検知から伝達までの時間は18年度末の時点で15秒程度だったが、19年度には7~9秒程度に短縮できた。20年度にはこの技術の実用化につながる7秒レベルへの短縮を目指している。

記者会見したトヨタのITS・コネクティッド統括部の村田賢一主査は、この研究開発がもたらすコネクティッドカーの近未来について「車両ビッグデータを大量に素早く、廉価に活用するなどでクルマの更なる安全・安心とともに、社会全体の生活の質向上に貢献していきたい」と、述べた。トヨタは従来の「レクサス」ブランド車に加え、18年からは「トヨタ」ブランド車でもコネクティッドカーの本格展開に着手、20年には日米で販売する乗用車のほぼ全てをコネクティッドカーとする計画だ。

村田主査は、現在販売中の同社のコネクティッドカーにも「車両の故障を監視するサービスのデータ処理時間の短縮などに、この共同研究の成果が生かされている」と紹介した。また、NTTデータのコネクティッドビジネス開発グループの古賀篤部長は、研究成果のオープン化について「この開発は当初から排他的なものではないとしてきた。ここで培ったノウハウなどはグローバルの自動車メーカーにも使っていただけるよう取り組みたい」とし、何らかのかたちで他陣営にも公開する方針を示した。

《池原照雄》

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