VAIO吉田社長「PCブランドから次世代ITブランドへ成長させる」

VAIOの吉田秀俊社長
  • VAIOの吉田秀俊社長
  • VAIOの業績の推移
  • VAIOの今後の事業イメージ
  • 11月13日から受注を開始したVAIOの新PC
  • (左から)VAIO商品企画担当の黒崎大輔氏、吉田秀俊社長、林薫執行役員
  • 倒れにくくするためにスタビライザーフラップを採用
  • インターフェイスをフル装備
  • 使用スタイルに合わせてさまざまなモードで作業ができる

復活シナリオ・フェーズの仕込みに

VAIOの吉田秀俊社長は11月13日に都内で開催した経営方針説明会で、「ソニーから独立した後の復活シナリオのフェーズ1は完遂した」と宣言し、これからフェーズ2の仕込みに入ると強調した。

2014年7月にソニーから分離独立した同社は当初、その先行きが心配されたが、2017年度には売上高214億8800万円(前期比10.8%増)、営業利益6億4800億円(同13.9%増)、当期純利益4億8200万円(同160.5%増)と2ケタの増収増益となり、過去最高益を達成した。

「PC事業で法人向けモバイルPCの販売が対前年比30%と大幅に伸び、海外展開でも対象国が拡大した。また、EMS(製造受託)事業では、受注先企業が増えて出荷台数が昨年比で2.5倍に増加した。特にロボティクス系を中心に大幅に伸びた」と吉田社長は過去最高益の理由を説明する。

そして、次なる戦略として吉田社長が打ち出したのが「PCブランドから次世代ITブランドへ成長させる」ことだ。そのために、さまざまな協業を実施していくという。その一つが先日発表された台湾の電子機器大手BenQ(ベンキュー)との提携だ。

同社が製造する電子黒板「インタラクティブ・フラットパネル」をVAIOブランドで販売する。パソコンからプレゼンテーションなどの資料を映し出すほか、画面に指でアイデアを描くことができ、それをそのままデータとして保存できるそうだ。

13日には第2、第3の協業を発表。指静脈認証技術を持つモフィリア(本社・東京都品川区)との協業では、まずVAIO製品に指静脈認証技術をセキュリティソリューションの一つとして導入し、今後より幅広いIoTデバイスに内蔵していく計画だ。同時に指静脈認証デバイスの小型化に向けた開発を共同で進めていく。

また、ジャスミー(本社・東京都港区)とは、次世代IoT事業創造に向けた協業の検討を開始する。具体的にはIoTとブロックチェーン技術を使った新たな商品群やサービス・アプリケーションの開発の可能性を検討していくそうで、VAIOとしてはジャスミーとの協業によって、新規事業を立ち上げようと考えている。

そのほか、EMS事業の拡充として、自動飛行型農薬散布マルチコプターの量産製造も計画中で、安曇野市で実証実験を開始する。「アグリテックの領域でもVAIOのものづくり力を発揮していきたい」と吉田社長は力強く語る。VAIOの元にはロボットの量産化の相談が相次いでいるそうだ。数年後には、VAIOという会社の姿が大きく変わっているかもしれない。

VAIO、構想3年、開発2年かけてつくり上げた新PC発売

VAIOは11月13日、12.5型ワイド2in1ノート PCの「VAIO A12」(個人向け)と「VAIO Pro PA」(法人向け)を発売すると発表。同日より受注を開始した。

「構想に3年、開発に2年費やした、これまでにない着脱式の2in1である。これまでの問題点をすべて解決した」と林薫執行役員は自信を見せる。これまでの着脱式2in1は、タブレット部分に基板やバッテリーを装備するため重たく、90度以上後ろに傾けるとすぐ倒れてしまう傾向があった。また、キーボードが打ちにくいなど多くの問題を抱えていた。

そこでゼロから開発することになったが、それは困難を極め、一時はギブアップしそうになったという。そのため、構想に3年、開発に2年も費やしてしまったのだ。そして、完成したPCは、タブレットとキーボードユニットを結合するヒンジ部分に、新開発した「スタビライザーフラップ」機構を採用。ディスプレイを開くとヒンジ下部のフラップが開き、支点を後方に移動して安定性を向上させた。

また、タブレットとキーボード部分を分離するためのロック解除機構を内側だけでなく外側にも用意した。それによって、片手でロックスイッチをスライドさせるだけで、すぐにタブレット化でき、カバンの中に入れた状態でも着脱できるようになった。

ビジネスで求められるインターフェイスもフル装備で、手のひらを乗せるパームレストが机面までシームレスで続くかのように感じられる「無限パームレスト」を実現し、キーボードを打ちやすくした。

そのほか、ワイヤレスキーボードモードがあり、タブレットを取り外した後も無線でタブレットと自動接続し、キーボードとタッチパネルが使用できる。これによって、お客と画面を共有しながら、キーボードで詳細情報を入力でき、その場ですぐに見積書などを作成することも可能だ。

重量はキーボード接続時で1.099kgで、タブレットのみだと607gと軽量化を実現。バッテリーもスタミナ仕様で、キーボード接続時最大8.1時間、タブレットのみだと最大8.5時間駆動する。価格はオープン価格だが、市場想定価格は個人向けモデルが12万1800円から、法人向けモデルが12万6800円からとなっている。

《山田清志》

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