国産の認証セキュリティ製品で高いシェアを持つ株式会社ソリトンシステムズは、さまざまなオンラインシステム、Webサービス等からハッキングされ盗まれた電子メールアドレスとパスワードのペアのリストのうち、暗号化されていない平文パスワードの解析を「.jp」ドメインのデータに関して行い、日本人がよく用いるパスワードのランキングを推定しホワイトペーパー「世界のハッキング事件による日本のアカウント情報漏洩分析 Volume 3:パスワードランキング」として公開した。
企業やWebサービスなどがサイバー攻撃を受けて盗まれた機密や個人情報の多くはサイバー空間を漂流していることがあり、なかにはブラウザにURLを入力すればすぐに入手可能な場所に保存されているケースも多い。こうしたデータは、パスワードリスト攻撃や、標的型攻撃の参考情報とされることもあるのだが、一度盗まれてファイアウォールの外に出てしまった情報を、企業側が把握することは容易ではない。
ソリトンシステムズは「認証セキュリティを扱う企業としての強い使命感(ソリトンシステムズ 執行役員 長谷部泰幸氏談)」から、同社独自のサイバー空間分析手法を確立し、誰でも入手できる状態で公開されている情報約20億件のデータを収集し分析した。
それによれば、約500万件の日本人と推定されるパスワードを分析した結果、全部で約81万4千種類のパスワードがあり、多い順10件は下記の通りとなった。
1位「123456」
2位「123456789」
3位「asdfghjk」
4位「12345678」
5位「password」
6位「1qaz2wsx」
7位「111111」
8位「sakura」
9位「1234」
10位「123123」
単純で推測されやすいパスワードの危険性はこれまでも、セキュリティ企業や各種専門機関などによって繰り返し警鐘が発されており、なかには独立行政法人情報処理推進機構が2015年に実施した少女漫画仕立ての啓発広告なども存在する(JR原宿駅竹下通り出口上に現在も掲出)。しかしその実態は、数字を昇順に並べただけの安易すぎるパスワードが1位、2位、4位を占めるなど、リスクのあるパスワードがいまだに多く使われている。
ホワイトペーパーを執筆した長谷部氏は、公開したホワイトペーパーのなかで、日本人ならではのパスワード設定として、8位の「sakura」について言及し、上位100位までに人名がパスワードに設定されていた例が多数見受けられたことと、「さくら」が人気の女性名であることから、これが恐らく女性の名前であろうと推測している。
またレポートの最後では、キーボードの並びを順に押下するだけのパスワードが多いのは人間の本質であり、実効性のある対策やアイデアが必要であると結ばれている。
これまで企業のセキュリティ対策は、ファイアウォール、IDS/IPS、WAFなどの、境界を守る「入口対策」、イントラネット内でのマルウェアの横展開を防ぐ「内部対策」、窃取された情報をC&Cサーバなど外に出させない「出口対策」など進化をつづけてきた。
今回のような、「一度外に出てしまった情報の把握」のような、「ファイアウォールの外のセキュリティ対策」いわば「“外部”対策」の必要性は徐々に国内でも認識されつつあり、米RiskIQ社など関連するいくつかのサービスがすでに国内展開を開始している他、今年8月には、パスワードの漏えい被害有無調査サービス「パスリーク」なども登場している。