スパ24時間はアウディが優勝、初音ミク陣営&可夢偉は苦難…鈴鹿10時間を含むGT3レースにさらなる隆盛の予兆

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#25 アウディ(手前)がスパ24時間レースを制した。
  • #25 アウディ(手前)がスパ24時間レースを制した。
  • 優勝した#25 アウディの(左から)ハーセ、グーノン、ヴィンケルホック。
  • スパ24時間レースの表彰式。
  • 2位の#8 ベントレー。
  • 3位の#90 メルセデス。
  • スパ24時間は60台を超えるマシンによって戦われた。
  • SUPER GTでもお馴染みの“初音ミク”がスパに見参。
  • 可夢偉(奥)を加えた豪華充実の3人ドライバー体制でスパに臨んだ初音ミク陣営(手前は谷口)。

スパ・フランコルシャン24時間レースの決勝が7月29~30日に開催され、4メーカー4台のトップ4が最後まで同一周回で走るなか、アウディ「R8 LMS」が優勝を飾った。SUPER GTの強豪「GOODSMILE RACING & Team UKYO」に小林可夢偉を加えた布陣は苦難の連続、完走はならなかった。

F1ベルギーGPの開催地であり、鈴鹿と並ぶ“チャレンジングなコース”としても世界的に広くその名を知られたスパ・フランコルシャン。そのスパを舞台にした24時間レースは今年で69回目の開催という伝統を誇る。

現在のスパ24時間は、GT3マシン(FIA-GT3規定車)によるレースの国際的な統治運営機関といえる「SROモータースポーツグループ」が主宰する、欧州ベースのハイレベルシリーズ「ブランパンGT」および世界シリーズ「インターコンチネンタルGTチャレンジ」の一戦という位置付けにある。GT3マシンで参加する上位チームの層は厚く、競技レベルはかなり高い。

2017年大会は、最後まで4メーカーの4車種が同一周回でトップ4を形成するという展開になった。1周約7km、F1コースとしては長いスパだが、ルマンやニュル(フルコース)ほど長くはないなかで、24時間走って異なる4台のマシンが同一周回でトップ4、上位6台が同ラップでの完走を果たしたという事実からも、高度接戦であったことが窺える。

優勝はジュール・グーノン/クリストファー・ハーセ/マルクス・ヴィンケルホックの#25 アウディR8 LMS。アウディ勢にとっては3年ぶりのスパ24時間制覇となった。2位の#8 ベントレー「コンチネンタルGT3」とは終盤、10秒前後の差で緊迫した争いとなっていたが、#25 アウディが最終的に11秒862差で先着を果たしている。首位から約52秒差の3位が#90 メルセデスAMG「GT3」、同67秒差の4位には#117 ポルシェ「991GT3 R」(車名は原則としてリザルト表記基準)。

63台が出走し、完走は35台。主な日本勢としては、SUPER GT/GT500クラスで活躍する千代勝正が乗り組んだ#23 日産「GT-R Nismo GT3」が総合13位で完走。また、日本のトップレースシーンでも長く活躍している世界的名手、アンドレ・ロッテラーが乗った#5 アウディR8 LMSが11位でゴールしている。

そして今回は、SUPER GTのGT300クラスで上位を賑わせる“初音ミク陣営”、GOODSMILE RACING & Team UKYOの参戦が日本勢最大の話題であった。片山右京監督がチームを指揮、ドライバーはGT300チャンピオン経験者の谷口信輝&片岡龍也、そしてマシンはスパ特別仕様の初音ミクカラーを纏った#00 メルセデスAMG GT3。そこに小林可夢偉が加わる豪華布陣での参戦だ。

しかし、彼らの挑戦は苦難に満ちた展開となってしまう。まず、予選で大きなクラッシュという厳しい事態に遭遇。その後はAMGやレース運営サイドの協力と理解を得て、レースウイーク中に別のマシンに乗り換えての参戦継続に。

カラーリングも当初とは違う状態の#00 メルセデスAMG GT3は、2分遅れのピットスタートから序盤は総合60位以下を走行。次第に順位は上がっていき、やがてはトップ30へ。ところが10時間半を経過した頃、夜間走行中に最悪の結末が待っていた。他車に突っ込まれて、マシンはまたもや大きく破損、リタイアということになってしまったのだ。GSR & Team UKYOのスパ24時間初挑戦は厳しい状況の連続であった。

無念の展開に終始した初音ミク陣営には再度の挑戦を期待したいところだが、さて、それとは別に今年のスパ24時間の開催期間中には日本にも関係してくる発表等が相次いでいる。

SROモータースポーツグループから来季のカレンダー等に関する発表があり、やはりSROが関与するかたちで鈴鹿1000kmから新生される「鈴鹿10時間耐久レース」(来年8月初開催)が、2018年インターコンチネンタルGTチャレンジの一戦にも組み込まれることとなった。世界的な強豪チームの鈴鹿参戦が、より一層現実味を帯びてきたといえるだろう。また、「ブランパンGTシリーズ・アジア」のレースも今季同様、鈴鹿と富士で計2回の日本ラウンドが実施される予定となっている。

ステファン・ラテルが率いるSROが中心となって隆盛させてきたGT3レースは、世界のモータースポーツ事情がいろいろと揺れている今現在も、今後の発展が期待され得るカテゴリーだ。メーカーが競争力あるGT3マシンを開発し、セミワークスともいえる陣営を中心とした強豪カスタマーチームがそれで競う構図は、うまく機能している。その意味で、鈴鹿10時間はもちろんのこと、スパ24時間を含むSRO関与のシリーズ/レースは日本人選手や日本のチーム、メーカーにとっては今後、さらに意識すべきステージとなっていくのではないか。

またスパ24時間の会場では、北米のレースを走っている「NSX GT3」を、ホンダが来季からワールドワイドにカスタマーレーシング展開していくことも公表された。また、今年の8月26~27日に開催される(1000kmとしては)最後の鈴鹿1000kmにおいて、このNSX GT3がジェンソン・バトンのドライブでデモ走行に参加することも決まっている。

今回のスパ24時間、優勝したアウディには5位と6位にもトップ同一周回で走りきったマシンがあり、トップ10に計4台を送り込んだ。Audi Sport カスタマーレーシング代表のクリス・レインケは「素晴らしいパフォーマンスを発揮したチームとドライバーに心からの祝辞を贈りたい。今年のスパ24時間はステファン・ラテルのオーガナイズ等々による絶妙な実力均衡策も実り、これまでになく過酷な展開となった。どのチームも実力が拮抗して、優勝への道は全てのチームにとって過酷なものであった。今週末のレースはGT3レースの見どころをあますところなく伝える、素晴らしいものだったと思う」と語っている。

かつてはアウディのWEC-LMP1陣営の開発首脳のひとりでもあったレインケ氏がカスタマーレーシングの代表を務めており、その彼が現在のスパ24時間に代表されるGT3レースの現状を絶賛するあたりからも、今後の世界のレース界の趨勢が垣間見えるようだ。

《遠藤俊幸》

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